仕事もできないくせに…20代後半社員が20代前半社員に攻撃的になるワケ

提供:@DIME

 ■連載/あるあるビジネス処方箋

 大学を卒業し、会社に22~23歳で入社し、2~3年経ち、20代後半になると、後輩ができる。この頃から、先輩として後輩にあえて厳しく接したり、できないような仕事をさせようとする人が現れる。中には、パワハラやいじめをする人もいる。こういう20代後半の社員には、注意が必要だ。特に中小企業などに目立つ。しかも、仕事はあまりできない。

 今回は、前途が明るいとは言い難い20代後半の社員が、20代前半の社員に攻撃的になる理由を私の取材経験などをもとに考えたい。

 ■根拠なき自信をもっている

 本人は、20代前半の社員に厳しく接したとしても、「厳しい」とは思っていない可能性がある。そもそも、経験が圧倒的に浅い。22~23歳で入社し、仕事を2~3年したところで、依然としてビギナーの域を出ていない。おそらく、給料分を稼ぐことができていない可能性が高い。わずか2~3年で完ぺきにできる仕事ならば、難易度が低いはずだ。

 それでも、本人は20代後半となり、2~3年の経験を積んでだけで、「そこそこデキル人」と信じ込む。根拠なき自信をもっているからこそ、周りからすると手に負えない。被害をもっともこうむるのが、20代前半の社員だ。しかも、得てして事務処理能力などが高く、前途有望な人がいじめなどを受けやすい。

 ■勘違いしている

 本人は経験が浅いがゆえに、思考も浅いことに気がついていない。問題や課題も正確にはつかめない。「なんとなく」というレベルでしかとらえることができない。経験が浅くとも、潜在能力の高い人は20代後半の時期にあえて謙虚になり、自分の仕事の問題や課題を見つけ出す。つまり、「考える力」がある。

 そんな人は、20代後半の中では相当に少数だろう。多くは「自分はそこそこにデキル人」と勘違いしていく。その勘違いにより、自らが成長する機会を失い、30~40代になったときにいかに損をするか、ということをわかっていない。30代になり、頭角をあらわす人と、平々凡々とした人になる人の差はこのあたりにある。

 ■自分の優位を確かめようとする

 22~23歳から2~3年の経験を積むと、会社や部署のことがわずかにだが、見えてくる。わかったかのような錯覚に陥る。すると、おぼろげな自信のようなものを形にしたい、と思い始める。その1つが、20代前半の人にできない仕事を与えたり、滅茶苦茶な指示をして、抑えつけたりすることだ。自分の優位を確かめようとする。この繰り返しで、おぼろげな自信を確かなものにしようとする。特に20代後半くらいに、このタイプが集中する。

 この人たちの多くは管理職になっていないから、権限や権力をもっていない。自分よりも経験が浅く、立場も弱い20代前半の人を狙い、滅茶苦茶な指示をすることで、権威をつかもうとする。

 ■教育する人がいない

 本来は、こういう人たちを教育し、管理する人が必要だ。そうでないと、20代前半の社員が、いじめやパワハラの被害を受ける可能性がある。そこから、精神疾患やうつ病になることもありうる。ところが、30代の社員が少ない中小企業やベンチャー企業などでは、勘違いをした20代後半の社員たちを抑えつける人がいない。結果として、20代後半の社員が20代前半の人の「大先輩」になってしまう。数年の経験を積んだだけなのだが、大きな勘違いをしまうのだ。

 ■競争がない

 数年の経験をして、20代後半になると、自分には相当な力がついたと思い込むのは、社員間の競争が浸透していないからだ。多少の競争があったとしても、激しいものではない。競争がないと、自分の力は正確にはわからない。「勝つ、負ける」ことを経験しないままに数年が経ってしまう。自分を「そこそこにデキル人」と受けとめてしまうのも無理はない。大企業や外資系企業では、20代の間でも激しい競争がある場合があるが、こういう職場では20代後半の社員は謙虚な人が多い。20代前半の社員の前で威張ることは少ない。

 20代後半は、キャリアをつくるうえで1つの曲がり角にある。後輩を抑えつけたい、威張りたいという人と、仕事をがむしゃらに、謙虚に覚えようとする人にわかれていく。いつの時代も、前者のほうが多いように感じる。

 本来は、後者のほうが多くならないと、その人は成長しない。20代前半の社員も浮かばれないだろう。明るい未来がない20代後半よりも、前途が輝かしい20代前半の社員を大切にする仕組みを会社はつくるべきではないだろうか。

 文/吉田典史

 ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)。

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