採用時に見抜けなかった… 新人社員の“驚くべき”ストレス耐性の低さ
提供:PRESIDENT Online新入社員 その驚くべきストレス耐性の低さ
新人が大量に入社してくる4月。
日本企業独特の風物詩であるが、各企業はこれから仕事の経験のない“素人”にビジネスマナーをはじめとする基礎的スキルを教え込むことになる。
だが、生半可な教育ではなかなか身に付かない。製薬会社の人事担当者は気を引き締める。
「最近の学生はマナーがまったくできていない。(入社後の)面接の受付でコートを脱いで鞄から必要書類を出して、よろしくお願いします、と挨拶するものだが、コートも脱がずにマフラーをしたまま受付のテーブルに鞄を置いて『どうも』と声をかけるだけ。あるいは書類の提出期限を守らない、必要な物を忘れる。挨拶ができないなど最低限のマナーが身に付いていません。それでも採用時はニコニコえびす顔をして大目に見ているが、入社したら別。研修では鬼の顔をして徹底的に鍛えます」
企業によっては人事部主導の1カ月間の新入社員研修があるが、あまり厳しくやりすぎると弊害も出る。研修中に叱られてへこんでしまい、研修に出てこなくなり、しばらくして精神科の医師が書いた「うつ」の診断書を持参し、休職を願い出た新人もいる。あるいは、研修に嫌気がさしたのか人事部宛に「退職届」を郵送してきたケースもある。
当然、採用時にストレス耐性があることをチェックしたはずなのだが、見抜けないまま入社してから本性を現す社員もいる。
大手外資系消費財メーカーでは研修後に営業部門に新人を配属したところ、2週間後に営業担当課長から人事部にクレームが飛んできた。
「何だよ、あの新人は全然使えないじゃないか。顧客先の納品に連れて行っても挨拶もまともにできないし、率先して物を運ぼうとしないで突っ立っているだけ。どんな教育をしていたんだ」
もちろん新人は一流大学出身の優秀と目される社員である。そんなクレームが他の部署からもたびたび寄せられたため、次年度から新入社員研修をとくに強化することになったという。
日本企業の“お家芸” 新人研修の弱体化
ただし、新入社員研修といっても講義形式主体の研修が大半であり、本当に身に付いたかどうかわからないまま、現場に配属されることも多い。
配属後に行われるのがOJT(職場内教育訓練)だ。一般的に入社後の1年間はOJTの期間とされ、即戦力として活躍するための大事な育成期間に当たる。
新入社員の指導を担当するOJT指導役には入社4~5年目の若手社員を起用し、それを課長がバックアップする仕組みだ。新人の業務を見守り、日常の報告や相談を受けながら業務の手順や結果をチェックし、問題があれば指導することが求められる。
だが、近年は人手不足や業務量の増大、ITの進化による年輩社員の知識不足などの理由で新人をゼロから一人前に育てあげるOJTの機能が低下しているとの指摘もある。
他国にない日本企業の“お家芸”の弱体化は人材競争力上においても大きな問題だが、それは別にして職場には研修をスルーしてきた新人を育成するのも大変だ。
いずれにしても職場の指導が重要になるが、最もやっかいなのが以下のような新人だろう。
・終業後の新人歓迎会などに誘っても「出たくありません」と言いだし、休日や終業後の職場の行事に参加することを嫌がる。
・指導された通りに素直にやるが、自分の意思でこうしたいという意欲が感じられない。
・叱られると急に元気をなくし、「自分には向いていません」と後ろ向きの発言を繰り返す
・遅刻しても悪びれず、常にマイペースで周囲と歩調が合わない。時折、周囲とはずれた言動をして驚かせる。
取引先社長の話を遮り「社長、マジすごいっすね」
仕事よりプライベートを重視するのは何も悪いことではない。だが、終業後の飲み会などの誘いは新人に気を遣っての対応なのだが、その気持ちを汲み取ることなく「参加したくありません」と突っぱねてしまうと職場の仲間も気分を概するだろう。
このタイプは「組織の一員であるという自覚を持たず、逆に外れたいという意識が強い」と語るのは住宅設備メーカーの教育担当者だ。
「このタイプに決して無理強いしてはいけません。一度本人の仕事に対する価値観や周囲の人間に対する気持ちなどをじっくり聞いてやることも大事です。そしてそっとしておくに限ります。いずれ仕事に少しでもおもしろさを感じるようになれば、自然に仲間に対する態度も変化してくるものです」
とはいえ、マイペースタイプの新人は周囲とのペースのずれに気づいていない場合が多い。
「取引先に連れていき、相手の社長の話を突然遮り、『社長、マジすごいっすね』と発言し、驚いたことがあります。とにかくマイペース。仕事を始めると視野が狭くなり、全体の状況を把握できなくなるという特徴があります。このタイプに『空気を読め』とか『全体の状況をよく考えろ』と厳しく言っても効果はありません。強く指導するのではなく、どういう時にどういう対応をすべきなのか明確な基準をつくって、それを守るように地道に言い聞かせながら指導していくことが大事です。多少の変な言動は目をつむりながら、本人が主体的に行動できるようにしていくしかありません」(前出・教育担当者)
このタイプに限らず、誰もがさじを投げたくなるような新人も少なくないだろう。怒りたくなるが、そこはぐっとこらえて忍耐強く教えていかなければいけない。
骨の折れる新人教育がこれから始まる。
(ジャーナリスト 溝上憲文=文)
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