“痛勤”地獄から逃れたい 時差出勤、テレワーク、指定席 多様化する企業の知恵
首都圏の通勤ラッシュ解消のために、鉄道各社はもちろん、都心に位置する会社も知恵を絞っている。時差出勤の呼び掛けや線路の複々線化、座席指定列車の導入など、ストレスの少ない通勤を求め、あの手この手の取り組みが進む。時差出勤やテレワークなど多様な働き方の広がりも、“痛勤”緩和を後押しする。(村島有紀)
シフト勤務制
損害保険ジャパン日本興亜(東京都新宿区)は、平成27年4月から、全社員を対象にシフト勤務制を導入した。もともとの勤務時間は午前9時~午後5時だったが、午前7時開始から午後1時開始の9パターンを用意し、社員の多様な働き方に応じる。
埼玉県所沢市に住む同社社員の白木麻衣子さん(40)は、勤務開始を午前8時からに切り替えた。自宅の最寄り駅から本社のある新宿駅まではJRを乗り継ぎ約1時間半。
シフト勤務が始まる前は、新宿駅へ向かう列車の混雑のピークと重なり、最混雑区間では188%(27年度)の乗車率に。「ぎゅうぎゅう詰めの息苦しい車内がつらかった」という。
現在、出勤時間を1時間早め、午前7時半に新宿駅に到着するようにしたところ、座席に座って通勤できるように。「電車の中では、本を読んだり、ニュースのチェックをしたりもできる。体も楽で仕事の能率も上がった」と笑顔で語る。
JR東日本では、混雑緩和のためにラッシュ帯を避けるオフピーク通勤を呼び掛ける。広報担当の橋本英樹さんは「時差出勤など、企業の取り組みはありがたい」。今年7月には、千葉-秋葉原駅間の総武線で、早朝時間帯に、一定の条件の下でICカード「Suica(スイカ)」で買い物をしたら、ポイントをプレゼントする早朝通勤キャンペーンなども予定する。
指定席で快適
“痛勤”の緩和のために、人気を博しているのが、確実に着席できる通勤時間帯の指定列車だ。小田急電鉄によると、東京西部のベッドタウン、町田市から新宿駅方面に向かう指定列車「特急ロマンスカー」は、午前7時台や同9時台が常に満席。午後6時以降に、神奈川県小田原方面に向かう座席指定列車も帰宅する会社員らでにぎわう。
また、西武鉄道と東京メトロは、3月末から所沢-飯田橋(東京都千代田区)、有楽町(同)、豊洲(江東区)駅間に、平日の早朝や帰宅時間帯に初の有料座席指定の相互直通列車「S-TRAIN」の運行を開始した。指定料金は大人510円で、1カ月前からの事前購入が可能。西武鉄道広報部の田口文雄さんは「仕事で疲れた自分へのご褒美として乗るという人もいるようだ」と話す。
一方、京浜急行電鉄は今月1日から、横須賀方面と品川駅までをノンストップで結ぶ着席保証列車「モーニング・ウィング号」と「ウィング号」を、座席指定制に変更。券売機に並ぶことなくインターネットから切符を買えるサービスも導入した。「利用者の利便性向上に役立った」(広報担当)としている。
本数を増やす
抜本的な改革を実現させる取り組みもある。小田急電鉄は来年3月、東北沢-和泉多摩川の約10キロメートルの区間で、上下線の複々線化を完成させる予定だ。電車の本数を増やし、新聞や雑誌を楽な姿勢で読めるように乗車率を160%まで低減させることを目指す。
一方、東京急行電鉄は、昨年5月から、横浜や吉祥寺、渋谷など乗降客の多い駅周辺で会員制サテライトオフィス「ニューワーク」を運営。場所や時間に関係なく仕事ができるインターネットなどの環境を確保することで、通勤電車の混雑緩和を狙う。
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