葬儀場で自由に音楽を流すことはNGなのか JASRAC、葬儀業界それぞれの視点

 
葬儀を生演奏で演出するケースも少しずつ増えているという(サウンドビュー提供)

 最近、葬儀では「好きな音楽で送られたい・送りたい」と考える人が多い。だが、インターネットの会員制交流サイト(SNS)で、「葬儀に父が好きだった音楽を流したいと言ったら、葬儀社に『著作権の問題がある』と言われた」などとの投稿があり、賛否両論の議論となった。葬儀場で自由に音楽を流すことはNGなのだろうか。

 著作者の権利

 ネット上では、「葬儀のときにまで著作権を持ち出すのは無粋」「葬儀だからといって権利を侵害してもいいわけではないだろう」などと、意見は割れた。

 音楽は、制作者に「著作権」という権利が認められている。権利の保護期間は制作者の死後50年。この著作権の中には、コピーを作ることをコントロールできる「複製権」や、公衆に直接聴かせるための演奏をコントロールできる「演奏権」などがある。演奏権は生演奏だけでなく、CDをかけることも含まれる。

 日本には作曲家や作詞家らの委託を受けて音楽の著作権を管理する団体がいくつかある。最も大きい団体が日本音楽著作権協会(JASRAC(ジャスラック))だ。

 JASRACは昭和14年設立で、国内外の約350万曲の著作権を管理。音楽の使用料を徴収している。平成28年度の年間徴収額は約1118億円にのぼる。

 演奏権が発生

 葬儀のときに音楽をかけると何が問題になるのか。JASRACは「演奏権が発生する」としている。

 何百人もの参列者が集まる著名人の葬儀ならば、「公衆に直接聴かせる」という点で演奏権が発生するのは分からないでもない。

 しかし、家族や近親者だけで送る家族葬で、さらに自分で買ったCDを持ち込んで流してもらう場合、「自宅で家族と一緒にCDを聴いているのと同じでは?」という疑問がわく。自宅で買ってきたCDを聴くのに演奏権は発生しないので釈然としない。

 この点についてJASRACは「『誰が音楽をかけるのか』が問題になる。葬儀の場合は、音源を持ち込んでいようと、営利団体である葬儀社などがかけているので演奏権が発生する」と説明する。

 結論は、「好きな音楽で送りたい・送られたい」と思ったら、著作権使用料からは逃れられない、となる。

 葬儀社で異なる

 しかし、個人で使用料を払うことは事実上不可能。では、葬儀場で音楽は流せないのかとなると、JASRACは「葬儀社など事業者ごとに契約を結んでもらうようにしている。そうすればCDをかけることはできる」のだそうだ。

 契約料は「施設面積500平方メートル以下で定員100人以下の施設ならば年間6000円」と、そう高いものではない。JASRACも葬儀社に加盟を促しているという。

 しかし、契約は葬儀社ごとにまちまちのようだ。葬儀社の業界団体「全日本葬祭業協同組合連合会」(全葬連)は「JASRACからそういう話がきていることは承知していますが、対応は各社ごとの判断になります」とする。著作権フリーの音源を使うのならば、わざわざJASRACと契約する必要はないからだ。

 ただ、JASRACと契約していないと持ち込みCDは流せない。もしも、「あの人が好きだった音楽で送りたい」と考えるならば、事前に葬儀社に確認しておいたほうがよさそうだ。(『終活読本ソナエ』春号から)

 ■「いい日旅立ち」「ふるさと」など

 音楽教室や出張演奏を手がけているサウンドビュー(千葉県市川市)によると、葬儀の際に好まれる音楽の定番は、「いい日旅立ち」「わが人生に悔いなし」「ふるさと」「マイ・ウェイ」「イエスタデイ」など。

 また、「川の流れのように」「千の風になって」「アメイジング・グレイス」などのリクエストも多いという。故人が通っていた学校の校歌などがリクエストされることもあるようだ。