自治体 地場企業の人材確保支援 奨学金肩代わりや現金支給
少子高齢化が進む中で貴重な働き手を確保しようと、各地の自治体が地場企業への就職につながる支援策を続々と打ち出している。雇用環境の好転や若者の大都市志向もあり、地方の企業では人材確保が重要な経営課題として浮上。若者の心をつかもうと、県外からの就職者に奨励金を出す取り組みもある。
製造に支障も
地元に帰って働く人に最高30万円払います-。佐賀県は5月中旬、思い切った施策を打ち出した。対象は500人で、予算約9000万円を用意した。山口祥義知事は「人材流出県から脱却したい」と狙いを説明する。
県外からの「UJIターン」希望者のうち、特定の就職情報サイトに登録する企業に正社員として入社する35歳以下が対象。初任給の格差や引っ越し費用を考慮し、学校などが九州なら10万円、沖縄と関西・中国・四国からは20万円、より遠い地域からは30万円とした。
県は奨学金の返済を肩代わりする方法も検討したが、必要な財源の割に支援できる人数が少ないため見送った。地元企業からは早速、「効果が少しでもあればありがたい」と歓迎の声が上がる。
佐賀県では、若手の人手不足が深刻だ。清涼飲料水などのメーカーは20人前後の採用枠に応募者数が満たない状況が3、4年前から続くという。担当者は「このままでは製造に支障が出かねない」と危機感を口にする。
文部科学省によると、昨年春に卒業した佐賀の高校生の就職先は、44.2%が県外。地元経済団体幹部は「県外の大企業が高校の1クラスをほとんどそっくり採用して連れて行ってしまうこともある」とこぼす。佐賀銀行の陣内芳博頭取も「昨年ごろから、地元企業を回ると必ず人手不足の話になる」とした上で「地方共通の問題だ。解決しなければ地方創生どころか、衰退する」と指摘する。
高校生に冊子配布
佐賀県と同様の課題を抱える自治体も動きだした。秋田県は若者の県内就職を増やそうとスマートフォン向けの「秋田GO!EN(ご縁)アプリ」を今年導入。就職説明会などに参加してためたポイントは、秋田での就職後に結婚式費用の一部などに充てられる。
青森県は地元で活躍する大人や、青森の暮らしやすさを紹介する冊子を高校2年生全員に配布し、地元への定着を促している。鹿児島県は昨年度、国の指針を踏まえ産業界などと基金をつくり、奨学金の返済を全額支援する取り組みを始めた。
労働政策研究・研修機構の調査では、出身の都道府県外に住む約2000人のうち45.1%が地元に「戻りたい」か「やや戻りたい」と回答した。高見具広研究員は「潜在的なUターン希望者は大都市にも少なくない。地元企業が魅力の発信力を高めれば、就職での移住者が増える可能性がある」と指摘している。
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