米倉誠一郎氏「イノベーターたちの日本史」
著者は語る□法政大教授・一橋大特任教授「イノベーターたちの日本史 近代日本の創造的対応」
■時代に新しい価値を付加した姿を描く
本書は、近代日本が開国・近代化という荒波にいかに対応したかを描いたものです。
最近では「日本人は創造的(クリエーティブ)でない」という議論を、外国人はともかく、日本人までがしているので、本当にそうなのかと反論しました。ただし、日本人だけが「民族的に特別に創造的である」などという主張ではありません。日本人も、アメリカ人、イタリア人、中国人、韓国人、バングラデシュ人など世界中の人々と同じように創造的でありイノベーティブな可能性をもった国民であるという主張です。
もちろん、日本人全員がそうであるという主張でもありません。日本人の中でも、高い情報感受性を持ち、自らの可能性に気づいた人々。時代の波に創造的に対応し、新しい価値を付加することのできた近代日本人の姿を描くことが本書の目的だったのです。
「創造的対応」という言葉は、経済学者ヨゼフ・A・シュムペーターが1947年に用いた概念です。彼は時代の変化に対応する仕方には、ただ単に「順応(an adaptive response)」すること、きわめて「創造的に対応(a creative response)」することの、2種類があるとしました。近代日本の対応は驚くほど創造的だったのです。
こうしたことを漠然と感じていたのは幕末史を勉強していた大学院生の頃でした。その後イノベーション研究やベンチャービジネス論が専門のようになっていったのですが、もう一度日本人の多くが忘れてしまったダイナミックな建国の姿をしっかりと書き残したいと思うようになりました。「構想40年」というのは大げさですが、決して嘘ではないのです。
僕は、一橋大学に1982年に経営史家として就職しました。その間、フラフラと色々な分野に手を出して、とりとめのない学者人生を送りました(笑)。しかし、やはり最後は経営史家として退官したいと思うようになったのです。読者の皆さんには、「えー、あの米倉がこんな本を」と思う方も多いかと思います。でも、これが僕のやりたかった仕事の一つなのです。(2160円 東洋経済新報社)
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【プロフィル】米倉誠一郎
よねくら・せいいちろう 1953年、東京都生まれ。一橋大大学院社会学研究科修士課程修了。米ハーバード大歴史学博士(Ph.D.)。イノベーションを核とした戦略と組織の歴史的研究が専門。現在、法政大大学院イノベーション・マネジメント研究科教授、一橋大イノベーション研究センター特任教授などを務める。学外でもアカデミーヒルズ日本元気塾塾長など幅広く活動。趣味はロックンロール。
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