『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』が伝えたいメッセージ 著者が寄稿
産経新聞社の河合雅司論説委員の新著『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』(講談社現代新書)が話題だ。発売直後から版を重ね、驚異的な売れ行きが続いている。何が読者を引きつけるのか。同書に込められたメッセージを、著者自身がSankeiBizに寄稿して語った。
『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』は、タイトルが示すように政府のデータや推計値を用いて日本の先行きを展望した“予言書”である。
「来年のことを言えば鬼が笑う」という諺(ことわざ)があるように、未来予測というのは難しい。それが50年先、100年先を見通すとなればなおさらである。
だが、「人口」に限っては、かなり正確に未来予測をすることができる。既にこの世に存在する人々に毎年1つずつ年齢を加えていけばよいからだ。出生数だけは不確定だが、それでも予測不能というわけではない。成熟国家となった日本が突如として多産国家に戻るとは考えづらい。しかも母親となり得る若い女性数が減っていく。すなわち少子化の流れは止めようもないことは分かる。
私が本書を書こうと思ったのは、2つの強い危機感からである。1つは日本人がすでに“絶滅危惧種”ともいえる状況に置かれていることだ。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、100年もたたないうちに総人口は5000万人ほどに減る。
実はこの推計には続きがある。一定の条件を置いた“机上の計算”だが、300年後には約450万人となる。現在の福岡県の人口にも届かない規模だ。西暦3000年にはなんと2000人にまで減るという。ここまで極端に減る前に日本は国家として成り立たなくなることだろう。
もう1つの危機感は、高齢者数がピークを迎える2042年が日本にとって最も「厳しい時期」となりそうなことである。
高齢社会の課題としては医療機関や介護施設の不足が挙げられるが、懸念はそれだけでない。この頃には、「就職氷河期」と重なった団塊ジュニア世代が高齢者となる。すなわち2040年代初頭というのは低年金、無年金という人がたくさん出てきそうなのである。一方で「第3次ベビーブーム」は到来せず、団塊ジュニア世代を支える世代は少ない。これを私は「2042年問題」と呼んでいる。
私が危機感を抱く2つの課題を解決しようと思っても、あまり時間は残っていない。少子化対策は、母親となり得る若い女性が激減してしまった後では大きな成果が望めない。「2042年問題」にしても、残すところ25年しかない。政府は団塊世代が75歳以上となる「2025年問題」への対応に追われ、「2042年問題」にまで手が回っていないのが現状だ。対策を講じてから成果が現れるまでに時間がかかることを考えれば、25年というのは決して長いわけではない。
では、どこから手を付ければよいのだろうか。まずは少子高齢化、人口減少の真実をよく知ることである。
少子高齢化も人口減少も、言葉としては誰もが知っている“常識”である。それがゆえに落とし穴もある。分かった気持ちになって、その実態を正しく理解している人は意外と少ないのだ。政治家や官僚、経済界の重鎮といった政策決定に大きな影響力を持つ人からしてそうである。ピントはずれな対策はいまだになくならない。
しかも、即座に解決しなければならない課題と、長期的に取り組んでいくべき課題とが混ざり合っていることが問題を複雑にしている。例えば、前者は高齢化対策や労働力不足対策である。後者は少子化対策である。日本人が“絶滅危惧種”から脱するには出生数を増加に転じさせなければならないが、一朝一夕に達成されるものではない。
少子高齢化、人口減少について正しく理解していない人が多いのは、この問題を俯瞰したものがないからだろう。そこで、問題の本質と深刻さを理解するには、カレンダーのように一覧できるようにするのが一番有効だと考えたのである。
私は新聞社での仕事のかたわら、大学の客員教授を務めている。教壇に立つと、「なぜ、ここまでひどい状況になる前に手を打とうとしなかったのか。これまでの大人たちは一体何をしていたのか」といった問いかけをされることがある。若い世代ほど、人口問題や少子高齢問題に対する意識は高い。
現在の中学・高校生や大学生は、2040年代初頭に30代後半~40代半ばとなる。彼らこそ「2042年問題」への対応において、先頭に立つ世代なのである。
こうした若い世代が少しでも早く真実に接すれば、その分、日本の行く末や、自分たちを待ち受ける社会にどう向き合えばよいかを考える時間も多くなる。こうした思いも、私を執筆へと駆り立てた。
本書が「20××年」といった形で、これから起こりうることをテーマ別に取り上げたのは、若い世代に少しでも具体的なイメージをつかんでもらいたいとの思いからだ。さらに、巻末には中学生や高校生、大学生向けに「未来を担う君たちへ」と題したメッセージを“手紙”として添えた。こうした世代にこそ、私の危機意識を共有してほしいとの願いである。
もちろん、“絶滅危惧種”からの脱却も、「2042年問題」の解決も、現在の中学・高校生や大学生にすべてを押しつけていいはずがない。私を含めた現在の大人たちは、彼らが背負う「荷物」を一つでも多く取り除く努力を今からでも始める責務がある。
今後、日本が目指すべきは「戦略的に縮む」ことだ。人口減少が避けられない以上、やがて日本は縮小の道を歩まざるを得ない。ならば、追い込まれてからではなく、日本に余力があるうちに積極的に取り組むことである。
本書はその具体策も「10の処方箋」として提言した。すでに語られてきたものもあるが、それはいまだ実行に移されていない。あるいは実現不可能と思われるものが含まれているかもしれないが、大胆な発想の転換なくして少子高齢化も、人口激減も乗り越えることはできないと考える。
本書をきっかけとして、1人でも多くの人がこの問題を自分のこととしてとらえ、一歩を踏み出すことを願うものである。
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