ドローンで過疎地域へ新聞配送 山梨で実証実験

 
過疎地域への新聞配送の実用化に向けて実施されたドローンのデモフライト=27日、韮崎市龍岡町下條東割(中川真撮影)

 深刻な人手不足が続く新聞販売業界で、店から遠く部数も減少傾向にある過疎地域への戸別配達を維持していくため、小型無人機「ドローン」を活用する取り組みが動き始めた。産経新聞などを扱う韮崎新聞販売センター(山梨県韮崎市)がドローンの開発を手がける「XYZ(エクシーズ)」(東京都新宿区)に依頼し、試験機を完成させた。韮崎滑空場で27日、実物の新聞を搭載したデモフライトが公開された。

 試験機は、物資運搬用の大型機「XX-II」。幅約2.5メートル、重さ約44.5キロで、新聞など最大160キロ(250部)を運べる。最高時速は70キロ。衛星通信で制御する。

 デモフライトでドローンは4.5キロの梱包(こんぽう)2つを荷台に載せ、釜無川沿いの芝の滑走路(全長約1千メートル)をフワリと離陸。見学者から歓声があがった。

 高度約30メートル。富士山を背景に安定飛行を続け、滑走路を1周して出発点に戻った。今回は陸上から制御する自動運航。プログラムに従い、誤差4センチ以内の目標通りに着陸した。

 エクシーズの梶谷健一代表は「成功だ。雨が続き調整時間が短かったが安定した飛行ができた」と手応えを語った。

 デモフライトを公開した韮崎新聞販売センターの三枝久人社長は「生き残りのために知恵と工夫が必要」と強調。「ネットを使えない高齢者のためにも戸別配達を続けたい。ドローンの技術は目を見張る進化をとげており、課題を解決しながら2、3年でめどをつけたい」と力を込めた。

 実用化後は、過疎地域の拠点にドローンで新聞各紙を配送し、地域のボランティアなどに有償で宅配してもらう方法を検討している。デモフライトで積んだ重さ9キロの新聞で航続距離は20~30キロ。バッテリーは拠点で容易に交換できるという。

 機体は約500万円。衛星通信機器や荷台などを合わせると約1千万円になる。梶谷代表は「航空機製造事業法の重量規制や防水対策など課題をクリアしたい」としている。