言動、マナー、串外し?…「モヤモヤ」だらけの世とどう向き合う “常識”に戸惑う中年

 
※写真はイメージです(Getty Images)

【常見陽平のビバ!中年】

 中年として避けては通れない本と出会ってしまった。頭を金槌で殴られたような衝撃だ。フリーライター宮崎智之氏による『モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ』(幻冬舎文庫)がその本だ。

◆ジェネレーションギャップに物申す

 タイトルが物語っているが、これは常識・非常識、ルール・マナーをめぐる「モヤモヤ」について考察した社会派エッセイである。まるで中年のゆっくりとした平泳ぎのように、浅く深く上下運動しているかのような、キャッチーさと「深さ」が気持ちいい。

 取り上げている「モヤモヤ」するものは、たとえば次のようなものだ。「スーツにリュック」「職場でノンアルビール」「ビジネスでマスク着用」「大雪でも定時出社」「タバコ休憩」「嫌いな上司のSNS友達申請」「焼き鳥の串外し」「iPhoneから送信」などだ。

 聞いただけで、中年としては何か言いたくなることがあるのではないだろうか。しかも、いかにも平成生まれと昭和生まれの互いの違和感に象徴されるような「ジェネレーションギャップ」で年下の世代に何か物申したくなるだけでなく、同世代でも激論が起きそうな案件である。

◆タバコ休憩…厄介な「異常識」たち

 思うに、世の中は常識・非常識の二項対立だけでは論じられない。同世代であれ、さらには同じ組織においてすら「異常識」という概念が存在するのだ。常識が異なるのである。先ほどあげたような件ですら、いろいろ言いたいことがあるだろう。

 個人的には、非喫煙者なので「タバコ休憩」については昔から違和感というか、損している気持ちを抱き続けてきた。非喫煙者にとっては、様々な意味で損なのだ。1時間に1回公然と休めるのは、不公平だと思っていた。

 しかも、それだけではない。「タバコ部屋」というのは、インフォーマルなコミュニティである。そこでは、年次、役職関係なく喫煙者たちがフランクに会話をしているのである。タテ・ヨコ・ナナメのつながりがうまれるのだ。ここで、交流が生まれたり、情報交換が行われたり、時にはアイデアが生まれたりもする。

 しかし、ここで上司がすっかりみんなに伝えた気になっていたり、この場で勝手に決めたことを共有しなかったりすると、これまた迷惑なのである。中には、管理職になった瞬間、タバコを吸い始めた人もいた。ストレスがたまること、さらには情報交換を推進することが理由のようだ。切なくなった。

◆ルールやマナーは時代とともに変化する

 この「タバコ休憩」問題以上に考えさせられたのが、「焼き鳥の串外し」問題である。正直なところ、私はあれが苦手だ。なんでこう、わざわざ串から外す必要があるのか。しかも、誰が最初に串外しを始めるかどうかで、気が利く奴かどうかを判断されているかのようにも感じてしまう。飲みの席もせわしなくなる。

 本書にもあるが、中には串で食べることを前提に、塩の振り方などを工夫している方もいらっしゃるのだ。

 もう一度言うが、串から外す必要が本当にあるのか。もっとも、まさにこれは「異常識」の案件である。あなたはどう思うか?

 常識・非常識、ルール・マナーというのは時代とともに変化する。中年はこの変化にときに恩恵を受け、ときに戸惑うのではないか。

 私が比較的、自由な働き方をしているということもあるのだが、以前に比べるとこれらがゆるくなってきているとは感じる(大学の教員なので、もっと“らしく”しろという圧を様々な方面から感じるのだが)。

 我々中年が若手社員だった約20年前に比べると、だ。当時は若手社員で営業だと、白シャツ前提。夏でもネクタイをしていた。お礼状は手書きで、筆ペンで、封筒で出さなくてはならなかった。先輩が食べ始めるまで箸をつけてはならないし、席次も厳格に決まっていた。髪についても、濃いめのアッシュブラウンですらNOだった。もちろん、髭もだ。

◆あなたは「自分」を説明できるか

 だが、我々中年もゆるくなってきているとはいえ、Tシャツで営業をする人がいること、営業でも茶髪がいることなどに戸惑う人もいることだろう。ジャケパンスタイルですら首をかしげる人がいるかもしれない。

 このような「モヤモヤ」は止まらないが、一つ言えることがある。それは、そんな「モヤモヤ」を乗り越えて進めるか否は、自分の言動、服装、マナーなどについて説明できるかどうかにかかっている。これに尽きるのではないか。なんとなくも立派な理由なのだけど。

 なお、私がいかにもアーチストっぽい服を着るのは人前に出る機会が多く、おしゃれをしなくちゃと思うからであり、髪を染めているのは白髪を隠すのと講義・講演に参加する人たちにおとなしく聞いてもらうために迫力を出すためである。

 なお、パーマをかけているわけではなく、「天パ」だ。

 今年も新入社員が研修を終え、配属されるころである。彼らはあなたをどうモヤモヤさせるのか?

【プロフィル】常見陽平(つねみ・ようへい)

千葉商科大学国際教養学部専任講師
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

【常見陽平のビバ!中年】は働き方評論家の常見陽平さんが「中年男性の働き方」をテーマに執筆した連載コラムです。更新は原則第3月曜日。

▼常見陽平のビバ!中年のアーカイブはこちら