受付嬢で損したこと・得したこと 成功の秘訣は「利用できるものは利用する!」

 
※画像はイメージです(Getty Images)

 【元受付嬢CEOの視線】

 みなさん、今の職業に就いてから「この仕事をしていてラッキーだったな」って思うことありますか?

 私は起業後もこの連載の原稿と向き合うタイミングで受付嬢時代をよく振り返るのですが、受付嬢で得をしたなと思うことが沢山あります。この「お得感」をどれだけ得られるかで、毎日の仕事の充実感やこれからの仕事人生が決まると言っても過言ではないでしょう。私にとってはそれが大きな財産になっていると思います

 一方、「受付嬢って損だな」と思ったこともありました。しかし考え方によってはただの損で終わることもなくなると思います。

 そこで今回は、私が受付嬢で「損した」「得した」と思うことについて触れ、そこにどう向き合っていったのかをお話します。

 まずは得したことから…。

その1 人脈作りのチャンスが多い!

 受付嬢経験しかなかった私が、起業することができ、今も会社やサービスを成長させていけている理由は「人脈が全て」と言っても過言ではありません。

 私の会社は「RECEPTIONIST」というアプリを開発し提供しています。そんな話をすると「橋本さんはコーディングできるの?」と聞かれますが、一切できません(笑)

 弊社がプロダクト開発できているのは、エンジニア採用ができているからです。もっというと、エンジニアを取りまとめることができるプロダクトマネージャーを仲間に加えることができたからです。

 私はずっとベンチャー・IT系の企業での受付に身を置いていました。そのおかげもあり、他業種の受付嬢よりも開発に携わる人が身近にいたことは本当に恵まれていると思います。このように、いい意味で「広く浅く関わりを持つことができる」のは受付嬢ならではだと思います。

その2 組織トップの動きを間近で感じられる

 ある方からこう言われたことがあります。

 「昇進は社長とどれだけ接点を持てるかで決まる」

 たしかに…と納得しました。

 というのも、私が受付嬢をしていた際に昇進していく人たちは必ずと言っていいほど役員や社長の来客によく同席していたからです。

 私たち受付嬢は大きな会社に行けばいくほど遠い存在となってしまう「経営層」の方々と日々関わることができます。毎日顔を合わせて挨拶するだけでなく、お客様にどのように接しているか、社員にどのように接しているかなど普段のデスクワークでは知ることができない姿を垣間見ることができます。

 自分たちが大切にしているお客様に受付嬢が丁寧に接していると、自然と私たちを気にかけてくださり、言葉をかけてくださる機会も増え、評価していただくようになりました。

 受付にいる私を見て、「会食に連れて行こう!」と思い出したようにアサインしていただいたこともありました。

 結果的に、社内では知ることができない経営層の方々の振る舞いに触れることができ大変勉強になりました。

 例えばみなさん、競合のサービスや会社ってありますよね? その存在に頭を抱えることもあるかと思います。そんなとき私はこう考えています。

 「一緒に市場を開拓していく存在と考えれば、仲間であり、尊重しあうべきだ」

 これは、ある経営層の方から頂いた言葉です。現在は私自身が経営者の立場ですが、この考えを持てるようになり、人間としても幅が広がったように思います。

その3 「会社の健康状態」を知ることができる

 受付という場所は、ある意味どこの組織にも属さない働き方をします。言い換えると、会社組織の中で唯一と言ってもいいほど客観的に会社に関われる場所だと思います。

 そしてお客様に対しても同じことが言えると思います。

 例えば人事部なら採用面接に来た人、経理部であれば金融機関の来客、といったように部署ごとに関わるお客様の種類は限定的だと思います。しかし受付嬢は様々なジャンルのお客様と触れ合うことができます。それは業種だけでなく、役職や立場においても同じことが言えます。新卒面接に来る学生から、普段テレビでしか見たことがないような有名企業の社長まで、受付嬢だからこそ幅広く関わることができるのだと思います。

 私たちは会社全体の組織や来客の状況を感じることができ、ある種「会社の健康状態」みたいなものを把握することができました。これも会社を経営する上で非常に有益な経験になっていると思います。

 一方で、もちろん損したこともありました。2つほど例に挙げてみたいと思います。

その1 OAスキルがほぼ身につかない

 これ、今も困ってます(笑)

 受付嬢って基本的にパソコンで作業する範囲がものすごく限定的なんです。入社するタイミングでは非常にハードルが低くなり有難かったのですが、「OAスキルが低くても入社できる=OAに触れ合う機会が少ないのでスキルアップしない」という現象にもなりえます。

 大体の受付嬢が操作するパソコン作業といえば、メール対応、会議室・スケジュール管理がメインで、たまにWordを使ってマニュアルや案内文作成をするくらいです。

 私は受付嬢時代にほとんどExcelは使いませんでしたし、Power Pointにおいては触ったこともありませんでした(笑) ですので、この2つのソフトは現在勉強中です。

その2 勝手な「受付嬢」イメージが先行しすぎる

 ・受付嬢だからお昼は食べない(「アイドルは◯◯しない」みたいなイメージ)
 ・受付嬢はお高くとまっている
  (付き合う人は社長か役員だけ。高級レストランにしか行かない)
 ・腰掛けで働いて、毎日飲み会ざんまい
 ・結婚相手を探すために受付で働いている etc…

 これらは全て私が実際に言われた経験をもとに挙げています。これだけ見ていると、受付嬢ってどれだけ悪いイメージ持たれるんだ! と感じるかもしれませんが、これも考え方次第!

 マイナスのイメージからスタートすれば、印象はアップするしかありません(笑) 「意外と◯◯なんだ!」と普段のありのままの姿を知ってもらえれば、皆さんが好感を抱いてくださいますし、一気に距離を縮めるチャンスにもなります。

利用できるものは最大限に利用する!

 今みなさんが感じている「この仕事ってこういうところで得してるな」というポイントは大いに利用して伸ばしていただき、「これは損だな」と思うポイントは逆の発想で捉えアクションを変えてみると結果的には「お得感」につながっていくかもしれません。

 ビジネスにおいてライバルの存在はつきものですよね。差をつけるには、考え方や捉え方も非常に大切ですし、「利用できるものは利用する!」これが非常に重要だと思います。

 いつか自分も利用される側に立てるくらい価値が提供できる人間になりたいと思っていますし、それはきっとみなさんも同じではないでしょうか。

【プロフィール】橋本真里子(はしもと・まりこ)

ディライテッド株式会社代表取締役CEO
1981年11月生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。11年という企業受付の現場の経験を生かし、もっと幅広い受付の効率化を目指し、16年1月にディライテッドを設立。17年1月に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。

【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は原則、隔週木曜日です。

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