《特別編》老後2000万円問題に向き合う 資産運用系フィンテック10選(前編)

 
※写真はイメージです(Getty Images)

 人生100年時代に浮上してきた「老後2000万円問題(夫65歳以上、妻60歳以上の世帯は30年間で年金とは別に約2000万円不足するとされる問題)」が、世間で様々な議論を沸き起こしています。金融庁の報告書に端を発した、この「老後2000万円問題」、メディアでの取り上げられ方も二転三転いまだ方向が定まらない様子です。

 「政府が悪い」「金融庁が悪い」「メディアの伝え方が悪い」「国民のリテラシーのなさが悪い」など、まるで悪者探しをしているかのようなネガティブな言論や、「足りないのは2000万円じゃない!」「3000万円必要だ!」「いや1億円は必要だ」などの不安を煽るような情報がネットでも、テレビでも見受けられます。

 でも見方を変えれば、それだけ、この問題が人々の関心事になっているということ、不安のタネでもあることの現れでもあるのでしょう。確かに、本当にそんな大金が必要とされるのなら、多くの人が不安になるのは、よくわかる話です。

 でも、もし私たちが、その不安に正面からポジティブに向き合ったのなら、結局のところ、2つの問いに行きあたるのではないでしょうか?

 それはすなわち、「いくら必要なの?」と「じゃあ、何をすればいいの?」です。「老後資金の不足」という不安があるのなら、それを解消できそうな方法を探るしかない。そして現代、お金のことを考える上では、やはり最先端をゆくフィンテックサービスを無視するわけにはいかないでしょう。

 そんなわけで、今回のエントリーでは、フィンテックサービスという観点からこの現在進行系の国民的課題に切り込んでみたいと思います。老後資金の不足に対する不安を和らげてくれる資産運用フィンテックサービスには、どんなものがあるのか?です。この問題に対しての僕自身の見立てとともに、国内他社のフィンテックサービスをメインに、フラットな眼で紹介していきます。

結局、いくら必要なの? 

 今回の件では、出された「2000万円」という試算に関して、多くの場合、憶測で語られているのではないでしょうか。報告書に書かれている2000万円という金額も、あくまでも平均的なケースとして算出されているだけです。必ずしも毎月約5万円が不足するというわけでもありませんし、また、現役で仕事をしていたときに、どのくらいの給料をもらっていて、どのくらいの社会保険料を支払っていたかなどによっても、年金の支給金額は大きく変わってくるものです。

 結局、この「2000万円」という数字は、あくまでも目安として出てきたもの。生活費がいくらくらいかかるのかも、何歳くらいまで生きるかも、人によって異なるものというのは、実は多くの人が気づいていることなのではないでしょうか。

 しかし、ネガティブに語られがちなこの問題を僕はあえてファクトはファクトとして、ポジティブな行動に転換する好機と捉えてみたいと思います。この問題は、自分自身のお金のことや生活のあり方、送りたい人生に向き合い、調べてみたり、考えてみたりする良い機会になるはずなのです。

 考えるポイントは、「退職金がいくらもらえるのか?」「会社の年金制度はどうなっているか?」「老後にどんな生活を送るつもりか?」「仕事は何歳まで続けるつもりか?」「定年後も副業をするつもりか?」など、多くあるはずです。1つ1つ洗い出してみて、「本当に必要な老後資金はいくらなのか?」をリアルに考えてみる。すると、将来の生活防衛をする上での戦略を練ることができるのではないでしょうか。

 でも試算をした後、出てきた数字を眺めながら単に不安がっているだけでは問題は解決しません。大事なのは、現時点で自分なりに調べたこと、算出された数字をもとに、もう一歩踏み込んで「じゃあ、何をすればいいか?」を考えて実際に行動に移すことです。

じゃあ、何をすればいいの?

 前提として本質的な話をすれば、老後資金は3つの方法で得られるものと考えられます。その3つとは、「(高齢就業による)労働対価」「私的年金」そして「公的年金」です。現在、この問題で、世間の槍玉にあげられているのは、3つ目の「公的年金」です。そもそもの話をすれば、「健康的により長く働いて稼ぐ」ということもできるし、「私的年金を自分自身で準備する」ということもできるわけで、公的年金だけをあてに老後の計画を立てるという認識は、日本の現状や近い未来の日本の状況ではそぐわなくなってきたと考えられます。

 そして、今、日本人の老後に求められるのが、メディアでも語られはじめている「自助努力」というものです。老後資金を自助努力でどうにかするというのは、つまるところ前述の「長く働く」か「私的年金を準備しておく」かのどちらかを自分の責任でやる必要があるということです。お金の増やし方としては、自分で働いてお金を「預金」しておくことだけでなく、「お金に働かせる」こと、つまり「資産運用をする」ということが挙げられるはずです。

老後資金は「資産運用」で何とかまかなっていける?!

 ここからがいよいよ本題になりますが、「資産運用」は僕自身のビジネス領域でもあるので、ポジショントークにならないように気をつけながらなるべくニュートラルなスタンスで説明してみます。

 「資産運用」という言葉は、実は多くの人にとって馴染みがないかもしれません。しかし、お金を増やすということに関しては、極めて大切な考え方になると思っています。

 僕は本気で、これからの時代は、老後資金は自ら資産運用することでまかなうべきという考えの持ち主です。

 では、資産運用とは何なのか。もしも、「資産運用の王道は、どんなものになるのでしょう?」という質問を資産運用初心者から向けられたら、僕はその答えとして「資産運用の王道は、長期・積立・分散の投資です」と答えることになると思います。その心は、「長期・積立・分散」を意識した投資、資産運用ができれば、複利の力と、分散の効果によって、相対的にリスクを抑えつつ効率的にお金を増やすことを期待できるからです。

 複利の力というのは、端的に言えば、元本が雪だるま式に大きくなっていくことです。つまり、最初は小さな雪玉でも、雪上に転がしていくことで、表面に雪が付き表面積自体が大きくなる。そして、しばらくすると大きな雪玉に変わる。当然、付着する雪の量が増えていけば、さらに付着する雪は増えていくわけです。

 この雪だるまになぞらえて考えると、元本(小さな雪玉)に利息(付着する雪)がつき、元本(表面積)が増えた状態で、さらにそこに利息(付着する雪)がついてくる。すると、運用する額も増えていき、さらに利息が増えるスピードが増していく。これが、複利の力(雪だるま式)になるわけです。

 つまり、長期的に投資対象と投資時期を分散させながら複利の力を活かすことで、資産の増加を期待するのが「長期・積立・分散」投資の基本的な考え方です。

 一般的に、この長期・積立・分散を活用した投資方法は、比較的効率が良いとされており、かつシンプルで簡単な投資方法として知られています。

 「長期・積立・分散の資産運用、投資」などと言われると難しそうに聞こえるかもしれません。

 しかし、これを多忙な現代人(特に働く現役世代)が行うのは、みなさんが想像するよりもずっと簡単なことなのです。なにせ、現代は、フィンテックサービスが溢れる時代ですから。

 そう、そこで登場するのが、資産運用系のフィンテックサービスです。スマホではじめられ、使い勝手がよく、手の平の中でお金の運用ができてしまう。

 これは是非、活用したいところです。

 でも、一度調べはじめると、たくさんのフィンテックサービスが出てきて、一体どのサービスを利用したらいいのかわからなくなるかもしれません。

 そこで、ここから先、4つのカテゴリーに分けて、僕なりにセレクトした日本の資産運用系フィンテックサービス10選を紹介してみたいと思います。

少額投資サービス

 老後が不安だと思っても「今はお金ないからなぁ、投資とか資産運用って言われても…」という人にオススメしたいのが、この「少額投資サービス」です。なんと言っても優れているのは少額からの投資ができる点。まとまった資金がなくても、資産運用ができてしまうわけです。最初は少額で始めて、慣れてきたら少しずつ増やしていける。資産運用や投資というものの手触りを感じたい人には、ピッタリなサービスと言えるでしょう。ここでは、「One Tap BUY」や「トラノコ」というサービスと、僕たちFOLIOの「テーマ投資」や、FOLIOがLINE Financial株式会社と一緒にリリースしたLINEスマート投資の「ワンコイン投資」というサービスを紹介してみます。

One Tap BUY

 One Tap BUYは、同名のネット証券会社により2016年にサービス提供がはじまったサービスです。なんといっても特徴的なのは、3タップで1000円という少額から株の売買ができてしまうことです。これまでの株式投資には、大きな元手が必要だったという点から少額で投資できる先駆的なフィンテックサービスとして、国内の金融業界では大きな注目を集めました。ユーザーは、選別された銘柄の株、日本株30銘柄以上、米国株30銘柄以上の中から、買うことができる点でも投資をはじめやすいのではないでしょうか。トヨタやソフトバンクなど日本を代表する企業の株の他に米国のGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)の株も買えます。また、指数の「日経平均株価」「S&P500」など株式市場全体に連動する ETF(上場投資信託) での運用もできるようになっていて、株式投資による資産運用の肌感覚をつかむには面白いサービスです。

TORANOTECのトラノコ

 トラノコは、TORANOTEC株式会社が運営する投資サービスです。おつり投資アプリを使うことで、日々の買い物などで発生するおつりを自動的に投資にまわすことができます。それも、5円スタートで1円刻みで投資ができてしまう。買い物をした際に出るおつりが、資産運用されるという仕組みです。おつりで気軽に投資ができて、そのおつりの金額は自分で決められる。運用のパターンもリスク水準が違う3ファンドから選べます。今までの「貯蓄から投資へ」ではなく、「消費から投資へ」というコンセプトを打ち出しているのが面白いサービスだと思います。

FOLIOのテーマ投資

 テーマ投資は、僕たちFOLIOの提供するサービスです。アプリでもLINEプラットフォーム上でも、簡単に資産運用をはじめることができます。サービスとしての完成度の高さ、シームレスな使い勝手の良さ、デザインは、「群を抜いている」と思っているサービスですので、良かったら是非アプリのダウンロードをしてみてくださいね! もちろんダウンロードは無料です。

 このテーマ投資というのは、「人工知能」や「ドローン」「自動運転車」「5G」「アグリテック」など、様々なテーマに投資できるサービスです。プロ選りすぐりの複数銘柄が1テーマにパッケージされているため、比較的簡単に分散投資できることになります。

 もっとも、サービス開始当初より1テーマの最低投資金額はもともと10万円程度で構成されていたところ、「テーマ投資には興味があるけど、いきなり10万円は出せない」という声をチラホラ耳にしていました。

 そういう声に応えるために、現在は1万円台から購入できるテーマも公開しています。2019年6月末にはそれぞれ3銘柄で構成された「アニメブーム(セレクト)」「Pay和元年」「テーマパーク」「AI最前線」の4テーマを公開したほか、今後も続々とユニークな少額で購入できるテーマをリリースしていく予定です。こちらも是非ご注目ください。

 申し訳ありません! 文字数の関係で前編でのサービス紹介はここまでとさせていただきます。それでは5日に掲載する後編を楽しみにしていただければ幸いです!

株式会社FOLIO

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2983号

加入協会:日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会

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※LINEスマート投資はLINE Financial株式会社(金融商品仲介業者 LINE Financial株式会社 関東財務局長(金仲)第854号)の金融関連サービスです。同社は株式会社FOLIOからの委託を受け金融商品仲介行為を行います。

【プロフィール】甲斐真一郎(かい・しんいちろう)

「FOLIO」代表取締役CEO

京都大学法学部卒。在学中プロボクサーとして活動。2006年にゴールドマン・サックス証券入社。主に日本国債・金利デリバティブトレーディングに従事。2010年、バークレイズ証券に転籍し、アルゴリズム・金利オプショントレーディングの責任者を兼任する。バークレイズ証券を退職後、2015年12月に、手軽に資産運用、株式投資を楽しめるフィンテックサービス「フォリオ」を提供するオンライン証券会社「FOLIO」を設立。フィンテックの旗手として大きな注目を集めている。次世代型投資プラットフォーム・サービス「フォリオ」は、「ユーザー体験」「操作感・表示画面」に着目されており、テーマ投資という形で誰もが簡単に株式投資を楽しむことができるように設計されている。FOLIOはお金と社会にまつわる情報を発信するオウンドメディア「FOUND」も運営している。

甲斐真一郎さんがフィンテックと業界の最新事情と社会への影響を読み解く連載コラム【フィンテック群雄割拠~潮流を読む】をSankeiBizで掲載しています。アーカイブはこちら