不安視された新型RAV4
新型RAV4の販売が好調だという。6月の販売台数は約8000台を記録。この手のライトSUVは今世界でもっとも人気のカテゴリーだから、黙っていても売れる。大きなミスさえしなければ確実に販売台数が稼げることは、誰にも想像が出来る。
しかも、8000台を売り上げただけではなく、ホンダ・ヴェゼルやトヨタ・C-HRといった競合を抑えての堂々トップは金星だと言えるだろう。実はデビュー前には、トヨタの開発戦略の失敗だとする意見もなくはなかった。それだけに、関係者はほっと胸を撫でおろしていることだろう。
不安視されていた意見はまず、先代は日本で販売されなかったことに端を発する。一旦離れたユーザーが回帰するのかが懐疑的だったのだ。
もともとRAV4は北米で人気だったこともあり、広大な大地を持つアメリカにあわせサイズを拡大していた。それが日本市場で受け入れられるかの不安がトヨタにはあったことで、投入を見送ったのである。
しかも、当時はハリアーが日本を支配していた時期だ。そこに肥大化したRAV4を投入することのカニバリを心配したのである。結果として4代目RAV4は日本に投入されなかった。それゆえに、今になって戻って来ても、かつてのRAV4ユーザーがソッポを向くのではないかと思われていたのである。
オフロードに軸足
そしてもうひとつ、新型のキャラクターチェンジが不安視されていた理由がある。そもそもRAV4は、都会を闊歩するためのSUVカテゴリーを切り開いたパイオニアでもある。背の高いスタイルでありながら、道なき道を突き進むオフロード性能を訴求することなく、買い物の足や通勤通学に適したコンパクトモデルとして人気を誇った。だが新型は、それまでのキャラクターを否定するかのように、活動エリアをオフロードに求めた。そのことに不安を感じた人も少なくない。
エンジンは直列4気筒2リッター+CVTと、直列4気筒2.5リッター+モーターのハイブリッド。4WDを充実させている。その動力性能的には驚くべきところはないが、4WDシステムには世界初との称号を得た「ダイナミックトルクベクタリング」を組み込んでいるなど鼻息が荒い。後輪左右の駆動輪を0~100の範囲で自在にコントロールするそれ自体は特別に目新しいものではないが、普段はフロント駆動のみで走行するという変幻自在なシステムにした。そこに世界初の機能を忍ばせているらしい。
コンソールのスイッチ類を見ても、オフロード性能に拘った形跡が伺える。セレクトモードには、「マッド&サンド」や「ロック&ダート」なる記述がある。「ダウンヒルコントロール」なる機能は、崖を下るような場面で効果を発揮するものだ。一般のシチュエーションではまず必要ない。ほとんどランドクルーザーやレンジローバーの世界である。そんな機能を採用しているほど、新型RAV4はオフロードに軸足を移したのである。
ここまでキャラクターを替えていながら、デビューそうそうの好調ぶりは関係者も驚きである。
オンロードでも不足なし
実際にドライブすると、オフロード性能を高めたといいながらも、オンロードでも不足はない。ごく自然な、可もなく不可もない走り方をする。いたずらに足を固めているわけでもなく、それゆえに乗り心地が悪いこともない。ごく平凡な都会的SUVの味わいなのだ。
ボディサイズの肥大化は、確かに大きさを意識することはある。だがしかし、くしくもハリアーからの乗り換え組には違和感はないだろうし、そもそも日本のクルマのほとんどはモデルチェンジによってボディサイズを拡大していく。その点では時代的であり違和感はない。
新型RAV4は、大きくなり、武骨になり、武闘派になって誕生した。それはまるで別物のようである。ただひとつ似ていることは、相変わらず人気のモデルであり続けていることだ。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。