2019年8月下旬に発生した佐賀県をはじめとする九州地方に土砂災害を引き起こした大雨。2018年の西日本豪雨に匹敵するような水災が発生し、テレビやネットのニュースを通じて水没自動車を見た人も多かったのではないだろうか。あなたの大切な財産が突然起きた災害で水没したらどうなるのか。今回は損害保険の再点検を中心にお伝えしよう。
今回の九州大雨の影響による土砂災害(執筆時点)は、土石流が佐賀県で1件。地滑りが長崎県と佐賀県で計3件、がけ崩れが長崎県で51件、佐賀県で14件。病院が床上浸水し孤立した映像や画像を見た人もいるだろう。毎年のように発生する大きな自然災害が、いつあなたを襲ってくるかはわからない。もし、あなたや家族を危険にさらすような災害が起こった時、命の次に大切ともいわれる財産をどのように守ればいいのだろう。
まずはハザードマップを確認
自然災害といっても色々あるが、今回のような水災から命と財産を守るには、ハザードマップを確認し、住まいの地域に起こりうる災害の種類を知っておくことが重要だ。ハザードマップにも種類がある。洪水、内水、高潮、津波、土砂災害、火山、ため池など災害毎にハザードマップが作成されている。詳細はハザードマップポータルサイト(https://disaportal.gsi.go.jp)から、ご自身の住まいの地域にどのようなハザードマップが存在するか確認しよう。それによって、どんな種類の災害が発生する可能性があるかを知ることができる。まずは危険性を知るということが、命と財産を守ることにつながる。
水災の場合はハザードマップだけでなく、現在の地名のみならず旧地名などを確認すると、水にゆかりのある地域であるかが確認できることもある。例えば筆者の地元の神奈川県藤沢市だと、鵠沼という土地があり、沼地だったことが想像できるだろう。同じく片瀬という土地があり、水辺であることを想像することができ、実際海に接する地域である。そもそも藤沢市の沢という字は、川や湿地や渓谷などの水を意味しているのだ。神奈川県にも川の字がついている。
水災は海だけでなく、川や山などでも発生する。原因は大量の雨水だから、梅雨の時期や台風の時期は要注意だ。内水と言って水道管を逆流する水災もあり、マンホールのある場所が危険なこともある。近年はゲリラ豪雨もあり、水がなさそうな場所も意外に油断がならないのだ。住まいだけでなく、職場においては内水ハザードマップも確認をお薦めする。
今後ハザードマップが整備されることで、地域ごとに土地の価格が大きく変わってくることが容易に想像できる。かつてはハザードマップなど気にせずに家を買う人が多かったようだが、これからは戸建てに限らずマンション購入時にもハザードマップの確認が必須だ。なぜなら、水災で住まいが孤立する可能性もある。マイホームだけでなく、賃貸においても危険性の有無を把握することや、理解をしておくことが肝要だ。
保険料節約か車両保険契約か
どんなにハザードマップを眺めても、実際に災害が起こってみなければ大変さを理解するのは難しいだろう。では、あなたの自動車が水没したらどうなるのだろう。自然災害は誰が悪いわけではない。日本に暮らすことを選択している以上、水災は身近に存在し続けるだろう。自然相手に裁判を起こすこともできない。となると、水没させてしまった自分の責任ということになる。自分の責任だから、自分の車は自分のお金で修理あるいは処分しなくてはならない。
自動車保険ってお金もらえないの?と思った方もいるだろう。自動車保険に加入している人の半分が契約するオプション、それが車両保険だ。自動車保険に加入している自動車は約半分が車両保険に加入している。ところが半数は加入していないのだ。実際、佐賀県では自動車の3~4割しか車両保険に加入していないので、契約していない自動車の方が多い。
車両保険を契約すると、今回のような水災をはじめとする自然災害で自動車が故障したり、水没したりした場合に保険金が受け取れるのだ。しかし、保険料が高いので、保険料を安くしたいというニーズにはマッチせず、オプション加入を断念するケースがある。また、ファイナンシャルプランナーからの節約アドバイスで、保険料削減という目的で車両保険を解約するケースもあるだろう。解約すればもちろん、水没しても保険金は受け取れない。保険料を安くしたいのか、補償を手厚くしたいのか考える必要がある。保険料節約が独り歩きしてしまうと、知らずに車両保険を契約しないということになりかねない。
補償を考える際にカギとなるのが前述のハザードマップである。自宅や駐車場の位置に水災の危険性はないか、日々の買い物やマイカー通勤などで水災危険地域を通行することはないか、山などの斜面に近いところを走るケースもあるだろう。実は、色々なことを考えて保険の検討をする必要があるが、提案時に丁寧に聞かれることはない。従って、完全に自己責任、自分で考える必要がある。
なお、車両保険に加入していても、地震や噴火に起因する水災は、通常の自然災害とは別に考えることとなる。従って、地震由来の津波や洪水での水没は、通常の車両保険では補償の対象外となり、別途特約を付ける必要がある。海岸に近い地域にお住まいの方は要検討だ。
自宅の水災補償は?
自宅が水災にあうこともあるだろう。自宅の内部まで泥水が浸水してしまうと、清掃、家財の廃棄、家財の買換え、自宅の修繕などまとまったお金が必要になってくる。自宅にかける保険として火災保険があるのだが、水災補償はオプションであり、加入しないケースがある。例えば35年契約(現在は最長10年の契約)の火災保険だと、水災補償をつけるか否かで保険料が大きく異なるので、補償の対象外としている人が多い印象だ。
内閣府の防災関係の資料(平成29年3月 保健・共済による災害への備えの促進に関する検討会報告 参考資料)を調べてみた。最近でこそ火災保険加入世帯の66%が水災補償を契約していることになっているが、持家世帯へのアンケートでは水災補償を契約している割合は33%程度となっている。統計とアンケートのギャップが大きい。これは推測に過ぎないが、昭和や平成前半の契約は水災補償のない契約が多く、最近ようやく加入率が向上してきたものと考えられる。母数で考えれば膨大な件数の住宅が水災補償未加入なのだろう。
かつては、火災関係のみの補償(住宅火災保険)と地震を除くすべての災害に対応する補償(住宅総合保険)の2択であった。近年は、最低限の住宅火災保険に水災をはじめとする自然災害を1つずつオプションで選べるようになっている。従って、保険料を比べたときに水災補償の無い住宅火災保険の契約が多かったと考えられる。
一方、最近では一部のファイナンシャルプランナーが保険料を安くするテクニックとして、水災補償を契約しないことをおすすめすることがある。マンションの二階以上など、水災のないことを前提としているはずなのだが、こちらも車両保険と同様に情報が独り歩きしていることもあり、保険料節約=水災補償外し、という図式になっている部分もある。尚、水災補償は地盤や土砂災害も含めているので、マンションだから加入の必要がないと考えるのは尚早で、建物地盤や建物構造についてデベロッパーや建築の専門家の意見を仰ぐ必要もあるだろう。
十分な保障とは何か
生命保険に関しても、保障を最適化して保険料を下げましょうという論調が一般的だ。しかし、ここにも盲点がある。一昔前は、生命保険に加入すると、特約として災害保障特約、障害保障特約などのオプションが当たり前のように契約されていた。これは、災害時の死亡や障害に対して、上乗せの保障を提供する内容で保険料は数十円から数百円といった金額だ。
自然災害で家族が亡くなったり、ケガで障害を抱えてしまったりといったようなケースで、従来型の生命保険であれば上乗せ保障が受け取れた。しかし、良かれと思って最新の保険に見直した結果、上乗せオプションが無くなって、肝心なときに保険金が受け取れなくなったということもありうるのだ。
保険料の節約は大切なのだが、それ以前に十分な保障とは何か、という議論がなされていないことが気になっている。
命と財産を守るという視点
政府の防災資料からもわかることだが、気候変動に由来して気象災害が増加している事実があり、日本は他国に比較して自然災害による損害額が多い国であるということを認識する必要があるだろう。
保険料の節約より、大切な補償(損害保険)、保障(生命保険)について、命と財産を守るという視点で改めて考えるきっかけとしてほしい。今年もそして来年以降も自然災害が無くなることは無いのだから。
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