鉄道業界インサイド

JR山手線のホーム発車標を「約○分後」表示に変更するメリットとは

枝久保達也

 11月から順次変更

 JR東日本は10月15日、山手線のホーム上の発車時刻案内を11月から順次変更すると発表した。列車本数の少ない早朝・深夜時間帯を除き、これまでの「14時19分」など発車時刻を案内していたのを、次の列車が到着するまでの「約3分後」のような表示に切り替える。地下鉄銀座線でも2018年から、始発駅を除き、平日は7時から21時、土休日は8時から20時30分まで、同じように「あと2分」という表示を採用している。

 実は海外では、このような案内方法が一般的で、中国や台湾の地下鉄では、あと何分何秒で到着するかカウントダウン形式で表示しているケースも珍しくない。既に山手線のホーム上の時刻表は、4時から6時台の早朝時間帯と、23時から1時の深夜時間帯以外の時刻は掲載せず、3~4分間隔で運行とのみ案内されている。

 山手線のように運転本数が多く、行先(方面)がひとつしかない路線では、時刻表で列車の発車時刻と現在時刻と照らし合わせるよりも、何分後に列車が到着するかを直接示す表示の方が、利用者が必要とする情報に合致するように思える。変更は2020年7月までに完了するということで、海外から多くの観客が訪れるオリンピックを機に「グローバルスタンダード」にあわせようという意図もありそうだ。

 あと何分で到着するという情報は、列車の走行位置を取得して表示する。列車に遅れが生じた場合、これまでは発車時刻と、約○分遅れという情報、加えてどの駅間を走行中か列車の走行位置情報が別個に表示されており、何分待てばよいか直感的に分かりにくかったが、今後は何分待てば次の列車が来るかが、リアルタイムに案内されることになる。

 現在、地下鉄では朝ラッシュ時間帯は発車時刻表示を消している路線も多いが、あと○分の表示で代えることができれば、この問題も解決する。

 利用者に戸惑いも?

 ただ、これまでの方式に慣れた利用者からすれば戸惑いもあるに違いない。発車時刻が見えなくなることで、遅れがあいまいになるのではないか(より直接的にいえば遅れが隠されるのではないか)という疑念や、乗り換え検索アプリなどで調べた列車の発車時刻を頼りに乗車する列車を選んでいた人からすれば、この列車で合っているのか不安が生じるということもあるだろう。

 JR東日本は、利用者の反応を見つつ、今後他の路線にも展開するか検討したいとしているが、運転間隔が10分を超える路線(現実的には当面の目安は5分だろう)、行先や種別が複雑な路線、あるいは通過待ちなどで到着時間と発車時間が異なる駅では必ずしも分かりやすい案内とは言えないだろう。全面的な切換えではなく、一部の路線では発車時刻の案内が引き続き用いられることになるはずだ。

 もうひとつ、発車時刻に縛られなくなることのメリットもある。たとえば10時00分発車の列車は、10時00分にドアが閉まって発車するのではない。列車の発車時刻は、正確には列車が動き始める時間のことであり、当然動き始めるまでにドアを閉めなければならないので、ドアは9時59分のうちに閉まり始める。しかしほとんどの利用者は、発車時刻とはドアが閉まる時間と解釈しているため、発車時刻よりも早く出発してしまったというクレームに繋がることになる。更にややこしいことに、時刻表や案内表示では示されていないが、発車時刻は秒単位で決められており、同じ10時00分発でも、00分00秒だったり、00分50秒だったり、見えない端数が付いている。鉄道事業者からすれば、あと○分の表示にすることで、こうした解釈のズレが解消されるという期待も込められているのかもしれない。

枝久保達也(えだくぼ・たつや) 鉄道ライター
都市交通史研究家
1982年11月、上越新幹線より数日早く鉄道のまち大宮市に生まれるが、幼少期は鉄道には全く興味を示さなかった。2006年に東京メトロに入社し、広報・マーケティング・コミュニケーション業務を担当。2017年に独立して、現在は鉄道ライター・都市交通史研究家として活動している。専門は地下鉄を中心とした東京の都市交通の成り立ち。

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