謎の武装リーフの正体
日産グランドライブにやってきてまず僕を驚かせたのは、この日の試乗モデルである「リーフ」が、まるでチューニングカーのように攻撃的に武装されていたことだ。
暗いマット系のカラーのリーフには、前後のオーバーフェンダーが装着され、タイヤは明らかに太い。アフターパーツメーカーのワイドなアルミホイールが組み込まれている。只者ではないことは、ステアリングを握る前から感じられた。
実際にそれは、リーフの戦闘力を上げた先行開発車である。発売時期等の言質は得られなかったが、近い将来に姿をあらわすであろう。
主要スペックを紹介しよう。リーフe+をベースに、EM57と呼ばれるモーターが2基組み込まれている。それによって、駆動方式は前後をモーターでパワー伝達する4WDになった。システム最高出力は227kW。最大トルクは680Nmに達した。あの、国内最速のGT-Rよりもトルクで上回っているのだから、開いた口が塞がらない。サスペンションとステアリング系は改められている。そもそも4WD化にともない、様々な部分に手が加えられているのだ。
最大の特徴は、前後駆動トルクが可変することである。フロント駆動のリーフに、リアにモーター駆動を加えた。しかも、前後駆動トルクは固定ではなく、シチュエーションによって可変する前後トルクスプリット式だ。
ドライバーの意図を電子処理
アクセルオンで旋回中、フロントの駆動が横グリップに勝り、強いパワーアンダーステアに陥ったとする。その場合、フロントの駆動トルクを抑えて、リア駆動力を高める。前後トルクの移動は、ステアリング舵角とヨーレートセンサーで読み取る。つまり、ドライバーがハンドルを切り込むことでもっと曲がりたいとコンピューターが判断すると、旋回性を高めてくれるのだ。
散水したスリッピーなテストコースで旋回中、フロントタイヤがスキール音を上げ始めた付近でトルクバランスがリアに移動し、スムーズな旋回姿勢に移行した。ワインディングを攻め立てるような激しい場面ではなく、雨の日の交差点など、日常の穏やかなシチュエーションでも有用なような気がした。
そこで感じたのは、日産GT-Rの走りの肝である「アテーサE-TS」に酷似している点である。GT-Rの基本はFR駆動である。フロントに搭載したエンジンからのビックトルクをリアタイヤに伝達する。そこで横グリップを越えると、一部をフロントに伝えることでテールスライドを抑える。同時に強くトラクション性能を発揮するのだ。それがGT-Rが世界トップクラスの速さを得た肝である。その考え方を、フロント駆動EVに応用したのだ。
このところのEV化によって、駆動トルクを4輪に適切に配分し易くなった、そのメリットを活かし、操縦安定性を高める技術は今後益々増えると思う。あの「アテーサE-TS」をEVに搭載する日がくるとは思わなかった。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。