鉄道業界インサイド

東武野田線、3月ダイヤ改正でどう変わる? 急行拡大や終電繰り下げ

枝久保達也

 東武鉄道は3月14日、野田線(東武アーバンパークライン)のダイヤ改正を実施する。野田線は埼玉県の大宮駅から、千葉県の流山おおたかの森駅、柏駅、新鎌ヶ谷駅を経由して船橋駅まで、都心から約20~30km圏の近郊住宅地を結ぶ総延長約63kmの路線だ。環状線という性質上、長距離利用者が少ないこともあり、意識されることは少ないが、実は京成電鉄本線の上野~京成成田駅間を上回る長距離路線である。

 ダイヤ改正のポイントは大きく2点

 東武は近年、野田線沿線の定住人口を増やすために、サービス改善・沿線価値向上に力を入れている。2013年に野田線としては初となる新型車両「60000系」を導入し、2014年に路線愛称「東武アーバンパークライン」を制定すると、2016年から大宮~春日部駅間で急行運転を開始。昨年10月には逆井~高柳駅間を複線化し、柏~船橋駅間全線の複線化を完了するなど、ハード、ソフト、イメージの刷新に努めてきた。

 こうした取り組みの集大成ともいえる今回のダイヤ改正のポイントは大きく2点。平日の最終列車の時刻繰り下げと、運河~船橋駅間の急行運転の開始である。そこで野田線を、埼玉県内(大宮~南桜井駅)、千葉県内柏方(川間~柏駅)、千葉県内船橋方(柏~船橋駅)の3つに分割し、エリアごとの変化を追ってみたい。

 まずは埼玉県内(大宮~南桜井駅)だ。前述のように2016年から急行運転を行っている大宮~春日部駅間の運行形態には大きな変化はない。しかし、千葉県区間での急行運転開始に伴い、大宮~船橋駅間の所要時間はこれまでの92分から76分に最大16分短縮される。大宮~船橋駅間の流動は大きなものではないが、埼玉県内から成田空港へ向かう際、急行列車を利用して新鎌ヶ谷駅で成田スカイアクセス線(アクセス特急)に乗り換えるという活用方法も考えられるだろう。

 終電繰り下げについては、大宮駅では最終七光台行きが23時55分から24時23分へ28分繰り下げられ、JR宇都宮線・高崎線の最終列車と接続。最終岩槻行きが24時17分から24時46分へ29分繰り下げられ、JR埼京線の最終列車と接続する。

 またプレスリリースには記載されていないが、東武によると春日部駅においても最終大宮行きが23時49分から24時18分へ29分繰り下げ、最終七光台行きが24時23分から24時48分へ25分繰り下げられるそうだ。

 続いて千葉県内柏方(川間~柏駅)だ。この区間では、新たに運河~柏駅間で急行運転が開始されるが、同区間の通過駅は江戸川台駅、初石駅、豊四季駅の3駅だけ。急行運転も平日は日中時間帯を中心として行われるので、通勤・通学利用には大きな変化は生じないだろう。

 終電繰り下げは、流山おおたかの森駅の最終七光台行きが24時44分から24時56分へ12分、最終柏行きが24時41分から25時00分へ19分繰り下げられ、それぞれつくばエクスプレスの最終列車と接続する。また柏駅の最終七光台行きが24時37分から24時50分へ13分繰り下げられる。その他、浅草駅21時30分発野田市行き有料着席列車「アーバンパークライナー」が柏行きに変更。柏駅23時17分発春日部行きアーバンパークライナーが新設され、深夜時間帯の着席需要に応える。

 船橋方は利用者が増加傾向

 最後は近年、特に利用者が増加傾向にある千葉県内船橋方(柏~船橋駅)だ。この区間では大宮~柏駅間とは異なり、平日の朝、夕・夜間ラッシュ時間帯にも1時間あたり2本の急行列車を設定する。急行は柏駅、高柳駅、新鎌ヶ谷駅、船橋駅以外の全ての駅を通過することで、柏~船橋駅間を最大11分短縮。通勤時間帯の急行運転は初めてのことだけに、混乱なく定着するかも含めて注目したい。

 終電繰り下げは、柏駅の最終船橋行きが24時22分から24時56分へ34分繰り下げられる。新鎌ヶ谷駅では最終は柏行きが24時13分から24時46分へ33分、最終船橋行きが24時08分から24時39分へ31分繰り下げられ、それぞれ北総鉄道の最終列車と接続する。船橋駅の最終柏行きも23時59分から24時32分へ33分繰り下げられ、JR総武快速線の最終列車と接続する。

 ただ、いずれの区間においても最終列車の繰り下げは平日のみで、土休日はダイヤ改正後もほぼ現行通りの時刻で運行される。うっかり乗り損ねないように気を付けよう。

枝久保達也(えだくぼ・たつや) 鉄道ライター
都市交通史研究家
1982年11月、上越新幹線より数日早く鉄道のまち大宮市に生まれるが、幼少期は鉄道には全く興味を示さなかった。2006年に東京メトロに入社し、広報・マーケティング・コミュニケーション業務を担当。2017年に独立して、現在は鉄道ライター・都市交通史研究家として活動している。専門は地下鉄を中心とした東京の都市交通の成り立ち。

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