学校再開「本当にいいのか」 自治体担当者の深い苦悩
新型コロナウイルス感染拡大を受けた一斉休校からの再開時期をめぐり、自治体が刻一刻と変わる状況に翻弄されている。文部科学省が3月24日に学校再開に向けた指針を出し、多くの自治体が新学期からの再開方針を打ち出したが、その後に国内で感染者が急増。安倍晋三首相は28日の記者会見で、専門家会議で今後改めて判断を仰ぎ、再開方針を見直す可能性も示唆している。「本当に再開していいのか」。自治体担当者の苦悩は深い。
「地域ごとに柔軟な判断をしてほしい」
萩生田(はぎうだ)光一文科相は31日の閣議後会見で、現時点で全国一律の休校要請を再び行わない考えを表明した。その上で「専門家会議の意見を踏まえ、より具体的なプロセスを示す必要がある」と述べ、マスク着用やこまめな換気の徹底などを求めた学校再開に向けた指針に、再開の可否判断で参考となる要件を追加するなど内容を具体化させる考えを示した。
感染拡大がみられる地域には、文科省が自治体に直接連絡を取り、再開の判断を慎重に行うよう求めていることも明かした。
その連絡を受けた東京都台東区では、管内にある永寿総合病院で集団感染が起きており、区教育委員会の担当者は「一病院での出来事とはいえ、危機感が相当高まっている」と話す。区のホームページでは4月6日から入学式など小中学校の活動を順次再開することを伝えていたが、現在は再び「検討中」という。
都教委は3月26日に都立高校などについて、始業時刻などをずらす「時差通学」や学年ごとに登校日を分ける「分散登校」といった指針を示し、都内の区市町村にも参考にするよう促した。ただ同区担当者は、都が指針を示した後ですら状況が急速に悪化していることを指摘し、「一自治体では決められない」。
同じ都内でも感染者が確認されていない武蔵村山市は、感染防止対策の徹底などの条件付きで4月再開予定だ。ただ、感染状況を見ると「再開時期の確定は難しい」とも話し、直前まで国や都の動きを注視する。
都教委でも都立学校の4月6日始業で準備を進めてきたが、関係者によると、この数日間の感染者急増を受けて、始業日を延期すべきだとの慎重論が強まってきた。
一方、6、7日の入学式開催に続き、月内は4時限目で終了とする授業短縮などを実施することで、8日からの小中高校などの授業再開を決めた横浜市。電車通学で行動範囲が広い高校なども、時差通学のために1時限目を取りやめ、朝の通勤ラッシュを避けられるようにする措置を取った。
市教委の担当者は「再開するのであれば、この時期に通知しないと学校の準備が間に合わない」と説明。保護者からは再開と休校延長の両方を求める声が寄せられていたといい、「ぎりぎりの判断だった」と苦しい胸の内を明かした。
不安尽きない保護者
自宅待機が続く小さな子供らを抱える保護者の不安も尽きない。重要な節目となる卒業式などの式典の縮小や中止が相次ぎ、級友との接触も限られる中、子供の精神状態を心配する声も上がる。
「具体的な決定が聞こえてこない。イライラが募る。新学期だって延期するなら早く発表してほしい」
新学期から小学6年になる長男(11)と新1年生の次男(6)を抱える東京都多摩市の主婦(40)は語気を強めた。
3月から急遽(きゅうきょ)、休校が始まり、自宅待機が長くなっている長男はストレスをためて怒りっぽくなっており、勉学の遅れも心配だ。「もっと宿題を出してほしい。タブレット端末を活用して授業の配信はできないのだろうか」と話した。
次男が通っていた幼稚園も休園となり、卒園式は縮小。楽しみにしていた遠足は中止となった。女性は「本当に寂しそうだったし、うまく切り替えることができるのか。小学校の入学式はどうなるのか」と表情を曇らせた。
新小学2年の長女(7)がいる横浜市の会社経営の女性(39)は「ずっと家にいるとストレスがたまるし、学習面も心配なので学校が再開されればありがたい」とする一方、「子供は大人より手洗い、うがいを徹底できないと考えると、4月いっぱいは休校が良いのではという思いもある」。学校が再開されれば、子供には手作りのマスクをさせ、除菌ジェルを持たせる予定だ。
新小学5年の長女(10)と保育園に通う次女(5)がいる東京都世田谷区の女性会社員(41)も「生活習慣が乱れ、1日中家にいるので健康的ではない。学習の遅れをどうやって取り戻すのかなど、不安を考えだしたらきりがない」と声を落とす。
学校再開を希望しながらも、感染への不安はぬぐえない。「次女はまだうがいがうまくできない。できる範囲で対策を取っていきたい」と話した。