「RAV4にPHVモデルが加わった」。この情報を耳にしたとき、一抹の不安を抱いた。プラグインハイブリッド、つまり、家庭用のコンセントからでも充電が可能なプラグイン機能を追加したハイブリッド車をリリースすることで、せっかく高く評価されている新型RAV4のイメージを崩すのではないかと心配したのである。
好調な販売に水を差さないだろうか
昨年デビューした新型RAV4は、より一層クロスカントリー色を濃くして登場した。ボディデザインはタフな印象が強く、河原や泥濘地を踏破するようなラフロード性能の高さを想像させたし、実際にプロモーションツールでも、荒れ地を突き進むイメージ展開をしていた。そんなオフロード色の強いSUVに、経済性や環境性能をイメージさせるPHVを追加することは、せっかくの好調に水を差さないものかと心配したのである。
だがそれは、杞憂に終わりそうな気配である。というのも、新たに加わったRAV4PHVは、大きなバッテリーを搭載し、大電力を発揮する。それはすなわち、財布と緑に優しいだけのPHVではなく、強烈なモーターパワーを得たことを意味するのだ。
与えられたキャッチフレーズは「E-Booster」だ。「E」の意味するところは「Enjoy」が含まれる。前後にビッグパワーのモーターを搭載、システム出力225kWのパワーを路面に伝える。プリウスのモーターを大幅に超える18.1kWhもの大電力を誇る。306psものパワーを得たのである。
実際に走らせても、その力強さには驚かされるばかりだ。EVモードでの航続可能距離は95kmに達する。速度が140km/hになっても巡航可能である。日本のハイウェイならば、電気モーターだけでクルーズできるというのだから恐れいる。ハイブリッドモードの0-100km/h加速は6.0秒という。半端なスポーツカーならば置き去りにしてしまうほどのスタートダッシュなのである。
そもそも電気モーターは、動き出しの最初の一歩から最大トルクを発揮するという特性がある。だから、信号待ちからの最初のスタートは特に頼もしい。それがハイウェイまで持続するというのだから開いた口が塞がらない。
どんなわがままも受け入れる
大電力の源であるバッテリーは、フロアの床下に低く広く積み込んでいる。ゆえに、操縦性も整っている。決してボディは軽くはないとはいうものの、コーナリング中に姿勢が乱れることもなく、安定度は高い。試乗車はまだ発売前の仕様であり、クローズドのサーキットで走ることになったが、タイヤから激しく悲鳴を上げさせるような走りをしても不安がない。これでサーキットを走ろうという御仁もいないと思うが、その気になればそれすらも可能なように思えた。
これによって、RAV4の個性だった「どこへでも行けそうな気がする」という個性に、「どんなわがままにも答えてくれる」という性格が加わったように思う。
RAV4PHVの環境性能はたしかに高い。だが、モーターパワーは動力性能を高めた。もちろん大電力1500wの給電もこなす。災害時の電力になるばかりか、キャンプ地でも活躍するに違いない。こんな都合の良いモデルは少ない。まったくわがままなSUVが誕生したものだと、ちょっと呆れた思いである。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。