教育・子育て

トイレに行列も 55クラス1800人の衝撃、過大規模校の課題

 少子高齢化が進み、全国的に小中学校の統廃合が進む中、関東や関西の利便性の高いエリアなどでは、開発が進んだことにより子供が急増し、国の基準を大きく超えるクラス数で授業を行わざるを得ない過大規模校が問題になっている。校舎を増築しても、将来的に児童数が減少し、校舎が余るなどのケースも考えられ、自治体にとって解決策を見いだすのは容易ではない。(地主明世)

5年後には児童数1800人になると予想されている京都府木津川市の市立城山台小学校

 5年後は1800人

 「小学校は生活全てが学び。過大規模校では、細やかな子供たちとの関わりを持つのに限界があるのではないか」。6月25日に開かれた京都府木津川市の教育委員会議。出席した保護者の一人は、これまで抱えていた不安をこう吐露した。

 住宅開発が進む同市南東部の丘陵地は、駅とのアクセスの良さに加え住宅ローン減税などの影響もあり、若い世帯の転入が急増。それに伴い、平成26年に開校した市立城山台小学校の児童数は、当初の69人から昨年は828人にまで増加、今年4月には千人超にまでふくれあがった。

 市教育委員会によると、5年後の令和7年には1800人となる見込み。ピーク時に55クラスになるとみられ、学校教育法施行規則が定めた小中学校の標準のクラス数(12~18クラス)を大きく上回る全国でも有数の「マンモス小学校」となるとみられている。

 教育委員会議に出席した保護者らは、児童数が千人を超えたことで、トイレに行列ができたり、運動会に2種目しか出場できなかったりするなど、すでに学校生活で制限が出始めていると訴え、学校の新設を求めた。

 実際、分離新設を求めて活動を始めた未就学児の親を中心としたグループもあるなど、児童の急増に伴う学校生活に不安を感じる親世代は少なくない。

 会議を傍聴した保護者は「毎年転入生が来て、卒業時には1クラス増えているのではと思うこともある。同級生の顔も把握しきれず、人間関係も毎年作り直すことになる。限界があるのではないか」と話す。

 多いデメリット、対策は後手

 住宅開発の影響により、児童生徒が急増する問題は、都市部を中心に各地で起きている。東京都足立区立の小中一貫校「新田学園」も平成22年の開校以来、生徒児童数が急増したため、校舎が分散化。兵庫県西宮市では児童数急増地域でのマンション建設を規制する指導要綱をまとめた。大阪市でも高層マンションの建設ラッシュなどで児童が急増する学校が相次ぎ、教室や運動場の不足も深刻化している。

 27年に文部科学省がまとめた手引では、住宅開発などによる児童生徒の急増について、学校行事などで児童の活躍の場が減ることや、同学年でもお互いを知らないなどのデメリットを挙げた上で、学校の分離新設や学校施設の増築のほか、教職員の増加などの対応策を示している。

 ただ、国が30年度に全国の市区町村を対象に実施した学校規模の実態調査では、「一部地域に過小規模校がある」が30%で最も多く、「一部地域に過大規模の学校がある」は2%にすぎない。少子高齢化が進む中、国も過小規模校への対応に追われ、城山台小のような過大規模校への対応は後手になりがちだ。

 文科省の担当者は「城山台小学校の1800人という規模は全国的に見ても、かなり多い部類」と指摘。「ほかのエリアでも東京や大阪などの都市部や、地方の県庁所在地などに人口が集中することで、過大規模校は今後も出てくる可能性がある。新設や増設、他の施設を教室として活用するなどの事例もあり、地域の状況に合わせて、子供が不利益を受けないよう対応を考えてもらいたい」と話した。