お金で損する人・得する人

台風、豪雨、地震…大災害で国からもらえる支援金を知ろう 生活再建の一助に

高橋成壽

 毎年発生する豪雨災害。最近では「数十年に一度の豪雨」という表現が当たり前のように使われています。日本では昔から、台風の通り道であり風水害は「〇〇台風」という名前で学校の授業にも出てきます。台風、豪雨(大雨)、土砂災害、高潮、地震など災害リスクが常に存在する私たちの生活では、政府による支援金制度が存在することはあまり知られていません。

 災害での支援金が知られていない理由に、保険金と異なり支払いプロセスに時間がかかり、金額も多くて数百万円単位と、損害保険金と比べると桁が少ないためと考えることができます。

 しかし、令和2年7月九州地方の豪雨、令和元年に千葉県を襲った台風15号と19号、平成30年の北海道胆振東部地震など、災害は日本列島の東西南北を問わず発生します。避難時にお金の心配をして自宅に戻るような危険を冒さずすむように、災害支援金についてお伝えいたします。

 最大300万円支給される被災者生活再建支援制度

 個々の災害を指定して支援を適用する枠組みがあります。それが、被災者生活再建支援制度です。

(1)制度の対象となる自然災害

・災害救助法に定める被害が発生している

・市町村や都道府県において所定以上の住宅被害が発生している

(2)制度の対象となる被災世帯

・住宅が全壊

・住宅が半壊又はやむを得ず解体

・居住不能な期間が長期継続

・住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ住むことができない

 (1)制度の対象となる自然災害により、法律の適用対象となる自然災害が認定されます。まず災害の指定を受けることが支援金支給の前提条件です。加えて(2)制度の対象となる被災世帯と認められることで、住宅が被災し住むことができなくなった世帯であることという対象に該当します。

(3)住宅の被害程度に応じて支給する支援金額(基礎支援金)

 住宅の被害程度に応じて、支給される支援金が異なります。

・全壊:100万円

・解体:100万円

・長期避難:100万円

・大規模半壊:50万円

となります。いずれか1つが該当し重複することはありません。

(4)住宅の再建方法に応じて支給する支援金額(加算支援金)

 基礎支援金に加えて、住宅の再建方法に応じて追加の支援があります。

・建設、購入:200万円

・補修:100万円

・賃借:50万円

 基礎支援金と合わせると最大300万円受取ることができます。被災後すぐに受け取れる支援金ではありませんが、避難生活がひと段落したところで最大300万円受取れることがわかれば、身の振り方を考える心のゆとりが持てるのではないでしょうか。

(5)支援金の申請

 基礎支援金、加算支援金の申請は市町村に設けられる窓口で行います。申請期間は、基礎支援金が災害発生から13カ月以内、加算支援金が37カ月以内となります。申請時の添付書類は

・基礎支援金の添付書類:り災証明書、住民票

・加算支援金の添付書類:契約書(住宅購入、賃貸借)

です。

 り災証明書は行政が発行しますので、窓口がわからない場合は市町村役場に相談してください。住民票を添付する必要があるので、マイナンバーカードがあると便利です。

 支援金の申請は、市町村で受け付けた後、都道府県で取りまとめ被災者生活再建支援法人に送付されます。その後、被災世帯への支給となりますので、損害保険のように迅速な支払いとはならないようです。

 令和2年7月の豪雨では熊本県で545世帯が被災者生活再建支援法の適用になりました(令和2年7月15日時点)。令和元年の台風15号・台風19号では福島県で2594世帯、長野県で1273世帯、ゴルフ場のネットが倒壊した千葉県では671世帯が対象となっています。平成30年の北海道胆振東部地震では、1169世帯が対象、平成23年の東日本大震災では20万2721世帯が支援金の支給対象となっています。

 被災者生活再建支援制度だけで、生活再建ができるわけではありません。しかし、損害保険に加入していない人、保険金だけでは住宅再建が難しいような場合に、最大300万円の支援金は大きな助けになるでしょう。

 住宅の応急修理制度

 災害救助法に定められた制度です。災害によって自宅が半壊などの被害を受け、居住できない場合かつ、応急的に修理すれば居住可能な場合に、自治体が必要最小限度の修理を行う制度です。

(1)対象者

・住宅が半壊または大規模半壊の被害を受けている

・修理することで自宅での生活が可能と見込まれる

 り災証明書が必要で、被災具合によっては年齢ごとの所得要件を満たす必要があります。仮設住宅に入居していると適用になりません。

(2)応急修理の範囲と金額

 住宅の応急修理の範囲は、屋根、壁、床など日常生活に必要な部分です。1世帯あたり59万5000円までの修理となります。修理の契約は自治体が行い、基準額以上の修正は自己負担となります。

(3)応急修理の期間

 災害発生の日から1カ月以内とされていますが、1カ月以内に修理を完了することができない場合は、必要最小限の期限延長が可能です。東日本大震災では発災後1年とした例があります。

 住宅の応急修理制度は建て替えや住み替えでなく、自宅を修理することで住まいを確保することに利用できます。他にも、地方自治体ごとに独自の支援策がありますので、被災後になりますが、住まいの自治体からの情報を得られるようにするとよいでしょう。

 いずれの制度も災害の発生から一定期間で受付が終了します。知らないと損、知っていれば得する可能性のある制度と言えるでしょう。

高橋成壽(たかはし・なるひさ) ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
寿FPコンサルティング株式会社代表取締役
1978年生まれ。神奈川県出身。慶応義塾大学総合政策学部卒。金融業界での実務経験を経て2007年にFP会社「寿コンサルティング」を設立。顧客は上場企業の経営者からシングルマザーまで幅広い。専門家ネットワークを活用し、お金に困らない仕組みづくりと豊かな人生設計の提供に励む。著書に「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)。無料のFP相談を提供する「ライフプランの窓口」では事務局を務める。

【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。アーカイブはこちら