鉄道業界インサイド

鉄道苦境、コロナ禍のお盆は車移動にシフト 今後も利用者離れ避けられず?

枝久保達也

 コロナ直撃…お盆期間の利用者激減

 東京や大阪など都市部を中心に依然として新型コロナウイルスが猛威を振るう中、夏の帰省・行楽シーズンが過ぎ去った。政府は「Go To トラベル」キャンペーンを推進する一方で、お盆の帰省を「一律に自粛を求めることは考えていない」としながらも、帰省する際は感染防止策を徹底するように呼び掛けるなど歯切れの悪い対応となった。

 一方、東京都の小池百合子都知事が都外への旅行や帰省を控えるように求めたように、全国の知事からは帰省や行楽の自粛を求める発言が相次いだ。結果的には、数字の上で見ると多くの人々が帰省や行楽を取りやめたようだ。

 JR各社が8月18日に発表した、お盆期間(8月7日~17日)の利用実績によると、JR東海の東海道新幹線の利用人員は前年比約76%減の105万7000人。JR西日本の山陽新幹線は同約77%減の49万4000人、北陸新幹線は同約79%減の7万8000人、JR東日本の東北・上越新幹線をはじめとする各新幹線は同約77%減の119万1000人と、ともに大幅に減少した。

 「のぞみ」が12本ダイヤ投入

 そんな中、東海道新幹線では初めて「のぞみ」を1時間12本運行する「のぞみ12本ダイヤ」を実戦投入し、余裕を持った本数で運転することで、車内の混雑緩和に努める対応に出た。「のぞみ12本ダイヤ」は、今年3月のダイヤ改正で全車両が最高速度285km/hで走行が可能な「N700A」車両に統一したことにより、従来1時間あたり10本が最高だった「のぞみ」をさらに増便させることを可能とした、東海道新幹線の究極形とも言えるダイヤだ。本来、東京オリンピックの開催に合わせて増大する旅客需要に対応するため導入したこのダイヤを、新型コロナウイルスの感染拡大により乗客が激減した状況で投入せざるを得ない状況に、JR東海関係者の心境はいかほどかと思うばかりだ。

 コロナ対策アピールも虚しく

 JR各社は新幹線車両の車内は空調・換気装置により、計算上、約6~8分で車内の空気が外気と入れ替わることや、車内の乗客が手を触れやすい箇所は定期的に消毒していることなど、新型コロナウイルス対策を積極的にアピールしているが、現時点では利用者離れに歯止めはかかっていない。

 JR東日本、JR東海、JR西日本の本州3社は、4~6月の第1四半期決算で、いずれもJR発足以来初となる赤字を計上した。赤字額はJR東日本が1553億円、JR東海が726億円、JR西日本が767億円となった。大手私鉄各社も軒並み赤字を計上しているが、JR3社の赤字額が特に大きくなった要因には、新幹線など長距離利用者の激減が挙げられる。新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着くまで、この傾向は変わりそうにないが、感染拡大は数年単位で続くとの見方もあり、正常化への道筋は見えない。

 航空業界も苦戦

 苦境にあえぐのは鉄道だけではない。航空大手の日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)のお盆期間(8月7日~16日)の利用実績も、JALの国内線が前年比67%減の約39万人、ANAが前年比約70%減の約47万人という厳しい結果になった。

 8月3日の新千歳空港発成田空港行きの航空機内で、前後の席に座っていた乗客が新型コロナウイルスに感染したという事態も発生している。感染者同士は面識がなく、会話もなかったといい、航空機内で感染したとは断定できないとしながらも調査が進められている。

 飛行機で乗り合わせた人が感染するとなれば、新幹線の車内でも感染が起こりうるわけで、新幹線を運行するJR5社としては頭の痛い話になってくる。他人との接触を避けるために、移動の際は公共交通機関を避ける動きが進みそうだ。

 実際、高速道路各社が発表したお盆期間(8月7日~8月16日)の利用実績によると、期間中の交通量は前年比約33%の減少に留まっている。他者との接触を避けられるマイカーを利用して帰省しようという動きが広がったことが分かる。

 公共交通はウィズ・コロナ、アフター・コロナの時代を生き残ることができるのか。政府や自治体は今こそ、実効性のある支援策を考える時だ。

枝久保達也(えだくぼ・たつや) 鉄道ライター
都市交通史研究家
1982年11月、上越新幹線より数日早く鉄道のまち大宮市に生まれるが、幼少期は鉄道には全く興味を示さなかった。2006年に東京メトロに入社し、広報・マーケティング・コミュニケーション業務を担当。2017年に独立して、現在は鉄道ライター・都市交通史研究家として活動している。専門は地下鉄を中心とした東京の都市交通の成り立ち。

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