レクサスLCにコンバーチブルが加わった。2017年にデビューしたクーペモデルのあの美しいスタイルを崩すことなく、スタイリッシュに仕上がったことを嬉しく思う。
LCコンバーチブルが搭載するパワーユニットは、V型8気筒5リッターNA。パワースペックはクーペのそれと同様で、最高出力477ps/7100rpm、最大トルク540Nm/4800rpmを絞り出す。特徴的なのは高回転特性であることだ。7100rpmで頂に達するエンジンは今では珍しい。クーペで狙った“走りの躍動感”がコンバーチブルですら味わえる。それほど高回転まで回して走るのがコンバーチブルのスタイルかと言われれば首を傾げたくなるが、ともあれ、爽快なオープンモータリングを損なうものではない。
同様にエンジンサウンドは、ルーフという遮音壁がないだけに迫力豊かに耳に届く。サウンドクリーニングという調律機能があることで、“聴かせるサウンド”なのである。
随所に“日本らしさ”
LCコンバーチブルが特徴的なのは、快適なオープンエアドライブのために、極めて日本的な気遣いが随所に散りばめられていることだ。サウンドクリーニングはもちろんのことメーターはTFT液晶式が採用されている。ルーフを格納した時の計器類の視認性にも配慮しているのだ。
そればかりか、空調システムも整えた。コンバーチブルは宿命的に寒暖の影響を受けやすい。夏場の炎天下でのドライブも少なくないし、凍えるような冬場のクルーズも気持ちいい。それに備えて、寒暖に自動で対応する「クライメイト・コンシェルジュ」を備えている。ステアリングヒーターや、エアコン、シートヒーターやネックヒーターなどが、乗員の環境をセンサーして温度調整する。実際にドライブしたのは酷暑に襲われた東京だったのだが、首筋やシートバックにヒンヤリと心地いい冷気が噴き出される。それがまことに頃合いよく強弱を繰り返すのだ。
風の巻き込みにも心憎いばかりの配慮を感じた。フロントスクリーンは、解放感を損なわないように低い設定だ。視界の邪魔にならない。だが、それによって起こりうる不快な乱気流が少ないことに驚かされた。背後に備える大小のディフレクターが効果的に作用していることは明らかだ。
さらにいえば、雨の日にルーフを叩く雨音さえも調律しているという。幸いにスコールに見舞われたが、金属のルーフに響く雨粒の打撃音とはまた違った、優しく響く音色が心地よかった。騒音計で計測したのなら数値は高いのかもしれない。だが、それが不快ではない。むしろ雨が待ち遠しくなるほどの音色である。
偶然ではない美しさ
スタイリッシュなフォルムにも心地よい配慮を示す。実はLCコンバーチブルのコンバーチブル化は、クーペ開発段階から想定していたという。電動ルーフを格納するスペースを、あらかじめ確保していたという。リアのガソリンタンクから伸びる給油管を、電動モーターや油圧システムに干渉しないようにレイアウトしていたというのだから驚かされる。欧米のモデルではけして珍しい手法ではないが、日本車でそこまでデザインしたモデルは少ない。コンバーチブル文化が浸透していない日本でそこまで挑んだ開発スタイルは褒められることだ。
ただし、ボディ剛性は不足しているし、低回転域の加速感や変速タイミングなど、クーペに準ずることで、むしろコンバーチブルとの相性は悪い。その辺りにコンバーチブル後進国を意識させられるが、日本に現存する美しいコンバーチブルの誕生を祝いたい。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。