受験指導の現場から

コロナで学力差は広がったかもしれない 受験をめぐる階層別「傾向」

吉田克己

 8月16日、何カ月ものあいだ危惧していたことが起こってしまった。何が? と言えば、塾でのクラスターの発生である。

 当日の夜の報道番組と翌朝の各紙で、「都内の塾に通う小中学生7人が陽性 塾の講師から感染か」「学習塾で“クラスター”小中学生7人感染」といった見出しで報じられた。

 各局・各紙ともそれほど大きな扱いではなかったためか、夏期講習会の現場ではほとんどの講師の口の端に上ることはなかったが、業界関係者の誰しもが「このまま何も起こらずに夏期講習会が終わってくれ」と内心で念じていたことだろう。

 筆者が第一報を耳にした時は、「複数の感染者が出たからと言って、講師と生徒のどちらが感染源なのか。生徒の父親由来ということもあり得るだろうし」と、やや甘く見ていた。しかし、報道によるとさにあらず、「学習塾の講師から感染した小学生5人と中学生2人のあわせて7人(中略)。この塾での濃厚接触者は70数人だが、7人のほかに感染者はいない」「30代の塾講師から感染したとみられ、7人中5人は無症状だという。濃厚接触者にあたる生徒ら約65人は陰性だった」とのことである。

 その後、お陰さまで塾関係での広がりは認められず、2学期も無事スタートが切れそうである。

教育の機会格差というより、学習量の差にコロナの影響

 そのような状況下、夏期講習期間中に、小6のいくつかのクラスを担当している講師から、気になる所見を聞かされた。曰く、「今年は、上下の差が大きいんですよ。上位の人数は去年と変わらないんですけど、真ん中が少なくって、そのぶん下のほうが増えていて…」。

 実際、筆者が小6の夏期講習会末のテストの採点を行った時の感覚でも、1学年1クラスの場合、クラス内の差は例年よりも少し大きいような印象はある。

 3カ月前の本欄で「受験生同士の学習格差はほぼない?」と見出しを打ち、「公立の小学校に通う受験生同士には、教育格差(不公平さ)はほとんどない」といった主旨のことを書いたが、少し訂正しなければならないようだ。「公立の小学生については、教育格差(機会の不平等さ)はほとんどなかったが、受験に必要な学力の差(学習格差)は、例年よりは大きくなってしまっているようだ」と。

 つまり、自律的に勉強する生徒と半ばであっても強制されないと勉強しない生徒という分け方で見た場合、後者の生徒の出遅れ感が例年より強まっている、と言えそうなのだ。

 5年生のうちから偏差値70以上の中学校が射程圏内に入っていたような生徒には、昨年と今年とで大きな違いは見られなくても、偏差値50~60前後の中学校の中で少しでも上を目指そうとしていた生徒達が、偏差値の低いほうに向かってロングテール化しているように見受けられる(この見立てが正しければ、得点ベースでの平均値・中央値が下がり、標準偏差が大きくなっているはずだ)。

受験で表面化しそうな傾向と2学期滑り出しの対策

 以上のような見解を踏まえると、来春の受験では偏差値別の各層それぞれで、いくつかの傾向が現れてもおかしくはない。

  • 上位層:「押さえ」の選択肢が広がる
  • 中間層:実質的な競争率(倍率)に低下傾向が出てくる
  • 下位層:一発逆転のチャンスが広がる可能性がある

 ただし、今年度の後半は、とくに中間層において、例年以上に上下の流動性が大きいと考えられるため、勝負は現場がようやく正常化した夏以降が本番と前向きに捉え、コンスタントに学力を伸ばし続けられるかどうか次第であることは言うまでもない。

 では、2学期のスタートにあたって、最初に必ずやるべきことは何か? 9月上・中旬に実施される模試を受け、その結果を元に弱点をきちんと分析することを嚆矢としたい。

 模試を受けさせるだけ受けさせておいて、夏休み前と数字を比較するだけで、それ以上は何もしない、という親は少なくない。模試は、結果を活かすことが最大事である。

 親自身が分析をして学習計画を立てるのは心許ないということであれば、塾に相談して分析・立案してもらい、塾からのフィードバックを親子で一緒に受けるのが理想的だ。

 優先してやるべきことが見えれば、子ども自身の張り合いも出る。せっかく、短い夏休みを夏期講習会に通って頑張ったんだから、親は子どものモチベーションを途切れさせないことに注力したい。

京都大学工学部卒。株式会社リクルートを経て2002年3月に独立。産業能率大学通信講座「『週刊ダイヤモンド』でビジネストレンドを読む」(小論文)講師、近畿大学工学部非常勤講師。日頃は小~高校生の受験指導(理数系科目)に携わっている。「ダイヤモンド・オンライン」でも記事の企画編集・執筆に携わるほか、各種活字メディアの編集・制作ディレクターを務める。編・著書に『三国志で学ぶランチェスターの法則』『シェールガス革命とは何か』『元素変換現代版<錬金術>のフロンティア』ほか。

受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら