受験指導の現場から

夏休みの追い込みは無理 来春の受験は例年以上に計画性と堅実性が物を言う (2/2ページ)

吉田克己
吉田克己

 久しぶりの登塾や授業で気がかりなこと

 もし、貴方の子どもが小6か中3で、宿題の多い塾に通っているのであれば、筆者としてはやや気がかりというか、親が気に留めておいたほうがよさそうに思うことが1つある。

 久しぶりの登塾・授業となれば、講師としても自然と熱が入る。と同時に、ほぼ2カ月ぶりに対面で授業をすれば、貴方の子どもにぽろぽろと穴が見つかるかもしれない。そして、その穴を埋めさせるべく、ばんばんと課題を与える講師が出てきてもおかしくはない。

 熱中すればするほど、思い入れが強くなればなるほど、周りが見えなくなるのは大人も同じである。特定の科目の課題量が多くなりすぎて教科間のバランスを欠いてしまい、延いては、我が子の物理的な限界を超えてしまう危うさがある。

 そういう時、子どもはどういう行動をとりがちになるかと言えば…そう、終わらせること(解答欄を埋めること)が第一義的になってしまい、「あれもこれも」が結果的に虻も蜂も取れない1日を生んでしまうことになる。我が子が、どんな勉強のしかたをしているか、塾の再開後しばらくは注視するに越したことはない。

 受験生同士の学習格差はほぼない?

 年度が明け、2度目の休校期間に入った頃、「学習格差がぁ~」と声高に叫ばれた時期があった。たしかに、地域が異なれば休校期間も違ってくるため、地域格差はある程度生じてしまう。また、同じ地域の小学校でも公立と私立とでは、学習環境に大きな差があることも事実だろう。

 しかし、事を受験に限れば、緊急事態宣言の期間が異なる都府県を跨いでの進学はレアケースであり、受験目的で塾に通っている受験生同士の不公平感は、“個人的には”ほとんど感じない。公立中学と私立中学の差は大きいが、私立中学から高校受験をするケースは稀である。逆に、公立高校の高3生は不利な立場に置かれてしまっているが、高3ともなれば、学校の授業に頼らず自分で試行錯誤できるようでなければ、難関大学に合格することも、その後の就活も覚束ないだろう。

 とまれ、子どもよりも親が先に焦ってしまってはいけない。少なくとも、焦っていることを子どもに悟られることは避けたい。これも私見だが、叱っても効果はなく、褒めても一時的で終わるのが常である。やる気がある子は励まし、やる気がない子は諭す。学校の再開は、来春の受験に向けて、親子全員で仕切り直しの家族会議を行うよい機会ではないだろうか。

京都大学工学部卒。株式会社リクルートを経て2002年3月に独立。産業能率大学通信講座「『週刊ダイヤモンド』でビジネストレンドを読む」(小論文)講師、近畿大学工学部非常勤講師。日頃は小~高校生の受験指導(理数系科目)に携わっている。「ダイヤモンド・オンライン」でも記事の企画編集・執筆に携わるほか、各種活字メディアの編集・制作ディレクターを務める。編・著書に『三国志で学ぶランチェスターの法則』『シェールガス革命とは何か』『元素変換現代版<錬金術>のフロンティア』ほか。

受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら

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