資産運用の世界では、富める者はさらに富み栄えます。一世を風靡した、トマ・ピケティは資本家による資本収益率が経済成長率を上回ると説きます。日本に住む多くの人は、資本収益率も経済成長率も触れる機会の少ない概念でしょう。端的に表現すると投資家は効率よく財産が増えることでより栄え、市民は財産形成に苦労するということになります。
筆者は10年以上ファイナンシャルプランナーの仕事に従事しており、色々なご家庭の資産運用の状況を見てまいりました。その中で、富裕層とよばれる金融資産が1億円以上の人と富裕層に入らない一般の人との違いとは何かを、資産運用という観点からお伝えします。
投資により効率よく資産を増やせる
今回は債券投資について解説いたします。債券投資とは、国や企業にお金を貸すことで金利収入を得る仕組みです。もっとも有名な商品は国債、個人向け国債です。利率は0.05%ですから、100万円分購入すると一年で500円の利子を受け取ることができます。税金を考慮すると、約20%の課税となるため、100円を納税し、手取りは400円となります。
一方で内閣府によると2019年のGDP成長率は0.8%です。ピケティの数式で考えると、rが0.05、gが0.8となります。r>gではなく、r(0.05)<g(0.8)となっているため、日本にはなじまない概念と捉えられる場合もあります。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によると、期待利回りは国内債券が1%台、外国債券が3%台、日本株式が5%台、外国株式が7%台となっています。つまり投資した方が、経済成長率よりも効率よく資産を増やすことができるということです。
リスクは投資の難しさであり面白さ
しかし、投資にはリスクがあります。同じくGPIFによると、リスク(ブレ幅)は国内債券が5%程度、外国債券は15%程度、国内株式が25%程度、外国株式も25%程度となっています。国内債券に投資する場合、1%のリターンが得られる可能性がありますが、価格変動がプラスマイナス5%程度あるため、絶対に利益が出るわけではありません。※個人向け国債は価格変動リスクはありません。
リスクが投資の難しさであり面白さでもあります。ファイナンシャルプランナーに相談する一般的なご家庭の多くは、投資のリスクをとることを避ける傾向にあります。そのため今なお日本においては投資する人は資産をもったリタイヤ層が中心です。
最近普及している、iDeCoやつみたてNISAは投資リスクを抑えることに焦点をあてており、積立による時間分散という手法で投資リスクを軽減できるとうたっています。しかし、時間分散による投資には致命的な欠陥があることは知られていません。その欠陥とは時間がかかりすぎることです。
お金の増えるスピードが速い一括投資
毎月5万円投資した場合、年間60万円、30年で1800万円投資することができます。利率を3%だとすると、30年後に2855万円になる計算です。もし手元に1800万円投資できる人が、利回り3%の投資をした場合、1800万円×3%×30年=1620万円の成果をえることができるため、元本1800万円+収益1620万円となり、1800万円の資金は3420万円に成長します。積立投資の成果は1.59倍ですが、一括投資ですと1.9倍の成果になります。
積立投資の効果は否定しませんが、一括投資の方がお金の増えるスピードが速いのです。お金持ちが益々お金持ちになるのはこのような理由です。しかし、日本では金融機関の取り扱う商品は、海外と比べて劣ることが多いようです。投資しても資金が増えないという構造になっていました。
このような状況にメスを入れたのが金融庁です。主に証券会社による商品の回転売買で手数料を稼いできたため、本来投資家の手元に残るはずの利益を食いつぶしてきたというのです。
退職金や相続資金はこのような状況で、銀行や証券会社が目減りに貢献してきた事実があります。一方で、富裕層のなかでも資金額が多い超富裕層の場合は、回転売買によって投資利益が食いつぶされるということがありません。それは付き合う金融機関が違うからです。
富める者がさらに富む、隠された仕組み
外資系銀行のプライベートバンキング部門やプライベートバンクとよばれる海外の金融機関など、超富裕層専門の金融機関があります。これらの金融機関が顧客提示する商品は最低投資金額が高額で、一般投資家には手が届かない商品がほとんどです。しかし、ここに富める者がさらに富む仕組みが隠されています。
超富裕層が投資している金額は億円単位です。その中で、外国債券に分散投資しているケースが見受けられます。個人向け国債のように0.05%という数字ではなく、3%~7%と一般向けの金融商品とは利回りが違います。
つまり、前述したシミュレーションを最低利回りとして、より高い利回りで資金を運用しているのです。利率3%で30年運用し続けると、元本は1.9倍になりますが、利率が7%になると元本は3.1倍になるのです。
もし資金が3倍になれば、相続税で資産の半分を納税するとしても、当初元本の1.5倍は残る計算です。一般市民は相続税を払うたびに一家の資産が減っていきますが、富裕層は資金を増やすことでゆとりをもって相続税を支払い、かつ一家の資産を増やすことにも貢献しているのです。
このように、富裕層は付き合う金融機関を替えることで資金を効率的に増やすことができるのです。一般の銀行や証券会社では、販売しやすい売れ筋の投資商品を販売し、一方で仕組み債と呼ばれる売り手が確実にもうかる商品を販売することがゴールとなり、顧客の資産成長を考慮できません。そのような歴史が、銀行や証券会社が経営に苦しむ原因の1つであり、顧客の資産が増えない理由となっているのです。
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