試乗スケッチ

アウディが放ったスタイリッシュな“刺客” Q3スポーツバックの魅力とは

木下隆之

わずかな違いに垣間見えるターゲット層

 このところ世界の各メーカーが特に力を入れているのが「Cセグメント」と呼ばれるコンパクトSUV市場である。

スタイリッシュなボディを備えたアウディQ3スポーツバック
スタイリッシュなボディを備えたアウディQ3スポーツバック
スタイリッシュなボディを備えたアウディQ3スポーツバック
スタイリッシュなボディを備えたアウディQ3スポーツバック

 ボディサイズは比較的小型で街に馴染み、それでいてアクティブな香りがする。国民の足であった小型セダンの座を完全に奪った感がある。市場はセダンではなく、このちょっと背の高い小型モデル、つまり荷室空間に余裕があるコンパクトSUVにご執心なのである。

 そんなCセグメントの波に揉まれていた「アウディQ3」が新型にスイッチした。今回は標準的な車形のモデルだけでなく、よりスタイリッシュなボディを備えた「スポーツバック」を紹介する。

 Q3スポーツバックのプラットフォームやパワーユニットに標準型のQ3との違いはない。最大の特徴はルーフを低く抑え、テールに導かれるにしたがってなだらかな稜線を描くクーペ風のスタイルだ。それが個性なのであり、明らかにスタイリッシュだ。

 Q3は都会型SUVであることから、若い層には理想的なモデルかもしれない。そのあたりもアウディは承知している。標準型のQ3が20歳から40歳の家族をターゲットにしているのに対して、Q3スポーツバックは同世代をターゲットにしていることに違いはないものの、特に子供をまだ授かる前の家族や独身をターゲットにしているというのだ。

 Q3スポーツバックはベースのQ3と比較して荷室の空間に制約がある。と言っても、筆者には大きな違いを感じるほどの差ではないように思えたが、数値上では確かに狭い。家族4人の旅行かばんと遊び道具を満載しての旅行を考えれば、そんなわずかな違いも無視できないのかもしれない。

 ともあれ、スポーツバックは明らかにスタイリッシュだから、Q3よりもアクティブな層に支持される可能性がある。つまり、行動力のあるカップルや独身にこそ相応しいというわけである。

新鮮味あふれるディーゼル仕様

 実際の数値を紹介しておくと、標準のQ3が全長4490mm、全幅1840mm、全高が1610mmであるのに対し、スポーツバックの全長はQ3より10mm長い。にもかからず、全高は45mmも低いのだ。ホイールベース、つまり前後の室内長に違いはなく、頭上空間と荷室に差がある。ターゲット層のライフスタイルを想像すると、まさに合点がいく。

 ちなみに、搭載するエンジンは2種類。直列4気筒1.5リッターのガソリンターボと、直列4気筒1.5リッターのディーゼルターボがラインナップされた。ガソリンエンジンの最高出力が150psであり、最大トルクが250Nmなのに対してディーゼル仕様はさらに強力で、最高出力150psと最大トルク340Nmを絞り出す。ディーゼルの悪癖の一つであるガラガラ音や微振動は抑えられており、ガソリン仕様にはかなわないものの、不満のないパワーユニットのように思えた。

 実はこのコンパクトSUVカテゴリーへのディーゼル投入は、ライバルメーカーを見渡してもアウディが初めてである。動力性能だけではなく、新鮮味と個性にあふれているという点でもディーゼル仕様の選択もありなのかもしれないと思った。

 オシャレな世界観を得意とするアウディがドル箱市場に放った刺客は、はたしてターゲット層のハートを射抜くことができるのか。

木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】こちらからどうぞ。