鉄道業界インサイド

遠距離通勤者は要注意 JR東に追随し私鉄各社も終電繰り上げへ

枝久保達也

背景に鉄道メンテナンスの担い手不足

 来年から首都圏の深夜時間帯の鉄道サービスが大きく変わりそうだ。9月3日、JR東日本の深澤祐二社長は2021年春のダイヤ改正で終電の時刻繰り上げと初電の時刻繰り下げを行うと発表した。その理由として挙げられたのは2点。ひとつは山手線(上野~御徒町間)の終電付近(午前0時台)の利用者数が、今年10月(1~16日の平均)と新型コロナウイルス感染拡大前の比較で40%減少しているように、新しい生活様式の定着により鉄道利用者が大きく減少していること。そしてもうひとつが、生産年齢人口の減少に伴い保守作業員が減少傾向にある一方、ホームドアやバリアフリー施設など安全やサービス向上を目的とした工事が増加している現状を踏まえ、終電繰り上げと初電繰り下げにより夜間の作業時間を確保することで、作業の効率化と人材確保に向けた働き方改革を進めたいというものだ。

来年から首都圏の深夜時間帯の鉄道サービスが大きく変わりそうだ=東京都台東区のJR上野駅(産経新聞社)
終電を前に家路につく人たち=東京都台東区のJR上野駅(産経新聞社)

 首都圏の鉄道事業者は良くも悪くもJR東日本に倣って動くところがある。すぐに私鉄各社からも最終列車の時刻繰り上げを検討するという声が上がり始め、11月4日に小田急電鉄が、9日に西武鉄道が2021年春のダイヤ改正で終電繰り上げを行うと発表した。このほか、東急電鉄や京王電鉄、相模鉄道でも来年春のダイヤ改正で終電を15~30分繰り上げる方針を発表しており、京急電鉄、東京メトロなども終電繰り上げを検討していると伝えられている。各社とも理由として挙げるのがJR東日本と同様、深夜時間帯の利用減少と鉄道メンテナンスの担い手不足の問題だ。

 終電繰り上げの動きについて、コロナ禍による業績悪化の対応策だと捉える向きもあるが、これは正しいとは言えない。運行本数の削減によって削減できる費用は微々たるもので、人件費についても深夜手当や乗務手当が若干減る程度。経営に影響を与えるほどのものではない。保守作業員の人手不足や定着率の低さはコロナ以前から指摘されてきたことであり、コロナ禍を機に長年の懸案であった深夜保守作業の環境改善を一気に進めようというのが実情だろう。

 実際、昨年9月にJR西日本は深夜保守作業の労働環境改善を理由に、来年春のダイヤ改正で12線区の終電を最大30分繰り上げると発表しており、仮にコロナ禍がなかったとしても、終電を繰り上げる動きは数年以内に各社に波及していたものと思われる。

終電が30分程度早まる路線も

 では具体的にどの程度、終電が早まるのか見ていきたい。JR東日本については、10月21日に線区ごとの具体的な繰り上げ時分が発表されている。山手線外回りで最大19分程度、内回りで最大20分程度、京浜東北線南行で最大33分程度、北行で最大23分程度など、東京駅を中心に半径100km圏内の17の線区で終電を繰り上げるほか、5つの線区で初電の繰り下げを行うとした。

 特に影響が大きそうなのが中央線快速で、現在の最終電車である東京駅午前0時35分発の武蔵小金井行きが30分程度繰り上がるほか、国分寺~高尾の各駅についても終電が約30分繰り上がる。また宇都宮線、高崎線については最終電車の運転区間が縮小され、宇都宮線の自治医大~宇都宮間は24分程度、高崎線の深谷~高崎間は21分程度繰り上げになるので、遠距離通勤者は要注意だ。

 小田急電鉄小田原線では現在、新宿駅を午後11時42分に出発する小田原行きの最終電車から午前0時38分発相模大野行きの最終電車までを20分程度繰り上げるとともに、午前0時30分発向ヶ丘遊園行きと午前0時53分発経堂行き最終電車を10分程度繰り上げる。このほか、江ノ島線で10分程度、多摩線で20分程度の終電繰り上げが行われる。また4時台を中心に各線区の一部区間で初電を10~15分程度繰り下げる。

 西武鉄道は山口線、多摩川線を除く主要路線で終電を概ね20~30分程度繰り上げる。池袋線では現在、池袋駅を午前0時9分に出発する飯能行きが午後11時52分発に、午前0時44分発の小手指行きが午前0時14分に、午前0時45分発の保谷行きが午前0時18分にそれぞれ繰り上がる予定だ(いずれも平日、以下同)。

 新宿線でも高田馬場駅を午前0時1分に出発する本川越行きが午後11時46分に、午前0時47分発の新所沢行きが午前0時18分に、午前0時50分発の上石神井行きが午前0時20分発に繰り上がる予定としている。

 いずれも詳細は12月から来年1月にかけて発表される予定だ。利用する路線の終電が変更されるのか、春までにしっかりチェックをしておこう。

枝久保達也(えだくぼ・たつや) 鉄道ライター
都市交通史研究家
1982年11月、上越新幹線より数日早く鉄道のまち大宮市に生まれるが、幼少期は鉄道には全く興味を示さなかった。2006年に東京メトロに入社し、広報・マーケティング・コミュニケーション業務を担当。2017年に独立して、現在は鉄道ライター・都市交通史研究家として活動している。専門は地下鉄を中心とした東京の都市交通の成り立ち。

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