改良部分の割り切りの良さ
新型レクサスISがデビューした。といっても全面的な改良を表す「フルモデルチェンジ」ではなく、公式的には「マイナーチェンジ」となる。パワーユニットからプラットフォームから、あるいは内外観をガラリと変えてしまうのがフルモデルチェンジならば、今回のマイナーチェンジを意訳すればささやかな改良モデルといえる。
興味深いのは、マイナーチェンジの手法である。ある部分ではフルモデルチェンジと呼びたくなるほどの大胆な改良を施しておきながら、一方ではほとんど手をつけない。その割り切りの良さがむしろ新鮮に映る。
たとえばパワーユニットに手を加えていない。ラインナップするエンジンは3種類。V型6気筒3.5リッターを搭載する「IS350」と、直列4気筒2.5リッターハイブリッドの「IS300h」と、そしてさらに直列4気筒2リッターターボを動力源とする「IS300」の三本柱。そのどれもが従来型をほぼ踏襲するのである。組み合わされるトランスミッションも共通である。そういう意味ではマイナーチェンジの域を出ないのだ。
インテリアの変更もほぼない。ドライパーを取り囲むようなタイトな空間も、目の前に広がる計器類も共通だ。細部には進化の跡がうかがえるものの、これまで慣れ親しんだISのコクピットそのものである。ガラリと意匠変更することはしなかった。その意味でもマイナーチェンジである。
ただし、驚くことに外観は大幅に変更されている。基本的なイメージは変わることがなく、走り去る姿を遠目に追う程度では、新旧の違いを感じることはないかもしれないが、パネルの支柱の90%が新設計だというのだ。
全長は30mm伸ばされた。幅も30mm広い。車高は5mmアップ。前後に長く幅広である。明らかに車格感が増しているのだ。エクステリアの構成部材では、フロントガラスを支えるAピラーとリアガラスの支えであるCピラーだけが流用であり、その他はすべて新設計だという。エクステリアだけを考えればフルモデルチェンジと言えなくもない。
本質的には「フルモデルチェンジ」
ISとしては3代目となる現行型のデビューが2013年。もう8年目を迎えることの鮮度維持策としてエクステリアだけを改良したのではない。小手先の細工で新鮮味を与えようとしたのではないのである。
プラットフォームは踏襲しているものの、走りの完成度は劇的に変わっている。ボディ剛性は格段に引き上げられているし、タイヤサイズが1インチアップされた。試乗車のIS350Fスポーツでは、フロント235/40R19、リアが265/35R19。なんと19インチになったのである。全幅の拡大は主にフレア状のオーバーフェンダーに振り分けられている。幅広スタンスになったのは、この大径タイヤを履きたかったからである。
しかも、ハブボルトの締結構造が採用された。これまでのような、ホイールハブ側からスタッドボルトがのび、ナットでホイールを抑える方法ではなく、ボルトを挿し込む形状に大変身したのだ。
ホイールを覗いた程度では、ハブボルト締結構造であるかを見破ることはなかなかできない。だがこれが実は大きな効果を生む。ボディとタイヤを強硬に締結させることが可能になった。つまり、走りの剛性感が格段にアップすることになったのだ。小手先の改良でも、新鮮味を得るがための改良ではなかったことは、アピール度が低いにもかかわらず手を加えたことからも想像できるのである。
タイヤの接地を見放すようなうねった路面を高速で突き進むと、その差は歴然とする。ステアリングの応答性は鋭いのに、リアのスタビリティ(安定性)が格段に高く感じるのだ。ドライバーへの安心感でもある。
公式的にはマイナーチェンジと言わざるを得ない。だが、本質的にはフルモデルチェンジと言いたくなる。そしてそれは、目立たぬところにも妥協することなく手を加えた、レクサスの真摯(しんし)な開発スタイルを物語っていた。
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