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バレンタインは現金還付プレゼント? 会社員と公務員でも確定申告しないと損する場合

高橋成壽

 毎年バレンタインが終わるとすぐに始まるのが所得税の確定申告です。例年2月16日から3月15日までに、前年の所得を確定させることで納税額も確定します。納税額を確定させる書類提出のタイミングで納税を行います。

 2021年の確定申告は新型コロナウイルス感染症対策のため、申告期限が4月15日まで1ヶ月延長になりました。会社員や公務員の方は職場の年末調整で所得の確定と所得税の還付が行われるため、経験のない人もいるでしょう。しかし、確定申告を上手に活用すれば、払うだけの税金の一部を取り戻せるのです。また、漫然と使っていたお金を所得税の節税という目線で考えるきっかけにもなるでしょう。

■確定申告が必須の人

 会社員や公務員の方は年末調整のみで確定申告不要となる場合が多いのですが、次に該当する人は確定申告が必要です。個人事業主や不動産収入のある人、年間400万円以上の年金収入のある人は、毎年当然に確定申告が必要ですので今回は割愛いたします。

・年収が2,000万円を超える人

・給与と退職金以外の所得の合計額が20万円を超える人

・転職や兼職、副業など給与を2箇所以上から受け取っている人

・仕事を辞めて年末調整をしていない人

・退職金を受け取っていて所定の手続きを経ていない人

■確定申告をしたほうがいい人

・特定支出控除のある人

 特定支出控除は以下の特定支出の合計額が、給与所得控除額の1/2を超える場合に、超える部分の金額が所得控除となる制度です。

 遠距離通勤で自腹の交通費負担のある人、人事異動に伴う引っ越した人、仕事に関係する研修に自腹で参加、仕事に関係する資格の取得費用、単身赴任の人で帰宅費が自腹、仕事に関係する書籍の購入など、仕事関係の支出にもかかわらず自己負担になっている支出が多い人は、特定支出控除が使える可能性があります。

 上記に該当するだけでなく、仕事関係の支出であることを勤務先に証明してもらう必要があるため利用の敷居が高いと感じる人が多いでしょう。あまり知られていいない制度のため、会社側も業務関連の支出と証明することに慣れていない可能性もあります。資格取得費用などは毎年発生する支出ではないでしょうから、該当する場合は会社と交渉し確実に控除対象とする必要があるでしょう。今年以降に研修や資格取得を目指す人は、会社と事前に交渉しておきましょう。

・家を買って初めての住宅ローン控除

 住宅借入金等特別控除の適用は、初回の確定申告が条件となります。2年目以降は年末調整で足りるのですが、初年度は確定申告が必要です。住宅ローン控除は、確定申告で税の還付ができる仕組みの中で最も効果の高い「税額控除」が可能です。不動産会社や住宅ローンの借入先からも説明を受けているはずですが、忘れないように実施しましょう。

・寄付した人

 ふるさと納税や被災地への寄付、慈善団体への寄付を継続している人は、寄附金控除の枠が利用可能です。ただし、どこへでも寄付すればよいわけではありません。国、地方公共団体、一定の要件を満たす社団法人、財団法人、学校、その他団体となります。寄付する際に寄付金控除の対象とされているかを確認するとよいでしょう。

・医療費が高額だった人

 持病による通院、入院や歯科治療などで支払った医療費が嵩んでいる人は、医療費控除が使えます。医療費が10万円を超える場合に適用できますが、年間所得が200万円未満の場合は、10万円に満たなくても医療費控除の適用となる場合もあります。

 病院やクリニックを利用した場合は、レシートを捨てずに貯めておく習慣を付けておきましょう。医療費が高額になるかどうかは、年末にならないとわかりません。あの時捨てなければ…となりませんようご留意ください。保険会社や共済から受け取るお金は医療費から差し引きますので、入院時よりも通院時等に使いやすい制度と言えそうです。

・災害や盗難にあった人

 災害大国である日本では、夏場は豪雨や台風、冬は大雪、季節を問わず地震や噴火などさまざまな自然災害に見舞われています。自宅が被災し居住空間を奪われてしまったり、大きな被害を受けることは誰しも可能性があります。災害によって受けた損害額を所得から控除する制度が雑損控除です。

 天災以外にも、火災、害虫による損害、盗難、横領など、資産に損害を被ったときに利用できます。損害保険金を受け取った場合は、損害額から差し引きますので、火災保険でカバーできない損害が発生した場合に利用できそうです。

・医師の治療をうけず薬局などで医薬品を購入している人

 薬局やドラッグストアなどで一定の医薬品を購入した場合や健康保持増進、疾病予防のために健康診断や予防接種を受け1万2千円を超える場合は、セルフメディケーション税制が対象となります。医薬品を買う場合は、セルフメディケーション税制対応のものかを確認してから購入するとよいでしょう。

■確定申告の補足

 最近はパソコンやスマートフォンから確定申告が手軽にできるようになりました。年金受給者の方などは税務署で相談しながら確定申告書を作成、提出する人が多い印象ですが、コロナ禍において税務署にわざわざ行く必要はありません。

 電子申告することによって、移動時間や新型コロナウイルス感染症の感染リスクをゼロにすることが可能です。

 ただし、電子申告した後に税務署からのお尋ねと称して証拠書類の提出を求められることがありますので、各種控除に利用する控除額の証拠となる書類は手元に残しておきましょう。

 確定申告をしたほうがいい人の多くは、確定申告をすることで所得税が戻ってきます。そのような場合は、2月15日を待たずに確定申告を提出し、所得税の還付手続きを行うことができます。早めに手続を実施すると税金も早い段階で戻ってきます。善は急げ、お得なことは早めに実行しましょう。

高橋成壽(たかはし・なるひさ) ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
寿FPコンサルティング株式会社代表取締役
1978年生まれ。神奈川県出身。慶応義塾大学総合政策学部卒。金融業界での実務経験を経て2007年にFP会社「寿コンサルティング」を設立。顧客は上場企業の経営者からシングルマザーまで幅広い。専門家ネットワークを活用し、お金に困らない仕組みづくりと豊かな人生設計の提供に励む。著書に「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)。無料のFP相談を提供する「ライフプランの窓口」では事務局を務める。

【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。アーカイブはこちら