あらゆる点で質感が高まった
日産の新型「ノート」が公道を走り出した。実はすでに昨年、新型ノートのプロトタイプの試乗を済ませている。ステージは日産のテストコース。人目を憚(はばか)りながらのドライブだった。
だが今回、晴れて衆目を集めながらの走行が可能になった。丁寧に整備されたテストコースでは感じられなかったインプレッションをお届けする。
まず印象的だったのは、あらゆる点で質感が高まったことである。搭載される直列3気筒1.2リッターエンジンはフロントに搭載されるものの、タイヤを直接駆動させることはしない。エンジンの回転が発電機を回す。そこで得た電力をバッテリーに送る。その電力でモーターを回転させ駆動しているのだ。
ハイブリッドの一種ではあるが、エンジンがダイレクトにタイヤを回転させることがある一般的なハイブリッドとは異なる。あくまで発電機としての機能である。それは「レンジエクステンダー」として分類される。
モーター出力は85kWまで高められ、最大トルク280Nmを発生する。力強さは歴然で、特に市街地での発進がスムーズになった。路地裏を低速で抜けるような僅(わず)かなアクセルのオン・オフに追従する。格段に走りやすくなったのだ。
これまでのノートe-POWERのように、ほとんどの領域でエンジンが始動することはない。加速しても、エンジンが唸りを上げるとは限らない。可能な限りEVモデルらしく振る舞うのである。バッテリー残量が低下するまでは、可能な限り始動を控え、静粛性を高めようとする。たとえエンジンが始動しても、アクセルペダルを緩めれば、もちろんエンジンは回転を中断し回生ブレーキに移行する。レンジエクステンダーと聞かされなければ、一般的なガソリン車と信じてしまうほど。常にガソリン音が響いていた先代モデルとは明らかに趣きが異なる。
ドライバーへ意識を向けた開発姿勢
これまでのように、バッテリーの残量を問わずエンジンが発電した点も改められた。電力が低下するまで安易にエンジンはかからない。より静粛性が格段に増している。今回市街地を走行していて、まず感心したのはその点だ。ボディそのものの遮音性も高められ、エンジンも控えめになった。格上のモデルのように感じられたのはそのせいだろう。
日産が得意とするワンペダル感覚もチューニングされている。アクセルオンで加速することには変わらないが、アクセルオフで強い減速が得られるそれは、アクセルからブレーキへのペダルの踏み替え頻度が著しく減るというメリットをうむが、逆に言えば、右足は絶えずコントロールしなければならず、それがストレスでもあった。右足を解放させ、惰性で転がすことができなかったからだ。
だが新型は、時にはコースティングもこなすようになった。赤信号などでの停車では、寸前にはクリーピングする。渋滞のトロトロ運転もこなす。右足の疲労が劇的に少なくなった。
ボディ剛性が飛躍的に高まったことでも走りに安心感も備わった。路面の凹凸を多少拾う傾向はあるが、ガサツな印象はない。しっとりした湿度感の高いフィーリングなのだ。
そもそもドアの開閉も、節度と剛性感がある。速度やシートベルトの警告音も近代的になった。ドライバーへ意識を向けた開発姿勢を強く感じるのである。
新型ノートは、劇的に上質になった。走り始めた瞬間に、開発陣のまるで信念のような開発姿勢を感じることができる。新型ノートはe-POWER専用車となった。ガソリンのみで駆動する仕様はカタログモデルから抹消されたのだ。たが、仮にこれがガソリン仕様であっても、いい車になったのであろうと思わせるほど、基本性能が進化していた。新生日産を象徴する一台に思える。確実に販売を伸ばすに違いない。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。