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携帯電話のプランを変更して老後の積立を始めるなら… iDeCo? それともNISA?

高橋成壽

 携帯電話料金のプランが引き下げられ、月額3,000円で普段遣いに支障のない通信量でもスマートフォンが持てるようになりました。総務省の家計調査では通信費は毎年のように値上がりしており、過去20年で20%値上がりしています。2019年の家計調査では世帯ごとの通信費は13591円となっています。もし携帯の料金プランを新しく見直せば、家計を楽にできる可能性があります。筆者の家計相談では夫婦それぞれが1万円以上の通信費を負担しているケースもあります。家庭の通信費が6000円に抑えられれば、数千円から一万円近い節約が見込まれます。

■固定費の削減は定期積立に最適

 携帯料金の引き下げができれば、継続して支出を減らすことができます。家計見直しの王道は、固定費見直しと言われています。固定費とは使っても使わなくても一定の支出を伴うもの。一般的には、携帯料金、生命保険料、家賃、住宅ローン、学費が固定費となります。

 固定費を見直すことが王道と言っても、一筋縄ではいきません。学費を見直すことは学校をやめることに繋がりますし、学費を奨学金で賄う場合は借金を子供に背負わせることになります。下宿している場合は自宅から通うという選択はありますが、通学の時間やアルバイトの時間と収入などを総合的に勘案する必要がありそうです。

 住宅ローンは見直しに数十万円から百万円以上かかる場合もあります。月額の支出が減ったとしても、貯蓄がまとまって減ることは避けたいところです。家賃を下げるには、家主と交渉するのも一つ。家賃の低い家に引っ越すことも有効ですが、引っ越しの手間暇お金を考えると、すぐに効果がでるとは言い難いでしょう。生命保険の見直しが完了している人は、下げる余地はありません。

 最後に残された固定費が携帯電話となります。今までは格安スマホで低容量、混雑時の回線が遅くなるなど、不便な代わりに安くなるのが携帯電話料金の見直しでした。しかし、政府の指導もあり携帯電話代金は大幅に安く、大容量の利用が可能となりました。

 一度プランを見直せば、既存の料金と新しい料金の差額が浮きます。色々と使いたい先はあるでしょう。今回は、老後の積み立てに回してはどうかという提案をいたします。

■iDeCoにすべきか、NISAを選ぶか

 老後のお金を積み立てるのに有名なプランは、iDeCo(個人型確定拠出年金)と一般NISA、つみたてNISAではないでしょうか。本稿読者の中には、既に投資を始めている人もいるでしょう。今回は、既に投資を始めている人にも改めてiDeCoとNISAの使い分けについてお伝えできればと考えております。

 まず、iDeCoとNISAの違いは大きく2つあります。

1.iDeCoは途中解約できないが、NISAは途中で換金できる。

2.iDeCoは途中で何度売買しても運用益は非課税だが、NISAは運用益の非課税は1度だけである。

 何が違うのかわからない人もいるでしょう。1の途中解約ですが、金融商品は解約することを前提に加入、購入します。すぐに換金できる商品の代表が預貯金です。換金に日数を要する商品は、株式、投資信託、保険などとなります。途中で解約できないiDeCoを利用する場合、絶対に使わないお金として積み立てていく必要があります。iDeCoの口座に積み立てたお金は、例外なく解約できません。条件付きで解約が可能ではないのです。

 一方、一般NISAとつみたてNISAは非課税期間中に投資資金を換金することが可能です。ですから、携帯料金を見直して積み立てる場合は、浮いたお金を使うことはないのかを考える必要があります。途中でお金が必要になりそうだと感じたら、iDeCoの利用はNGです。一般NISAかつみたてNISAを利用しましょう。もし、家計がギリギリの場合は、そもそも投資しないほうが無難です。

 家計にゆとりのある人は、iDeCoにお金を投じてもいいでしょう。携帯電話料金を引き下げたいという意識の人は、家計改善が目的で資金的ゆとりがない場合は、途中解約できるNISAの方が向いているでしょう。世の中何があるかわかりませんので、換金性の高い資産で投資を行うほうが、何かと便利です。

■米国の金利上昇に伴い対策するなら

 iDeCoに投資する人にも、NISAに投資する人にも気をつけていただきたいのがアメリカの金利上昇です。外国の金利が上昇すると、外国に資金を預けたほうがお金を増やしやすいため、金利を上げた国の通貨の価値が高まり、日本の通貨の価値が低くなります。そのため、円安ドル高に為替が動く可能性が高いです。

 実際に、1ドル105円くらいの為替レートから1ドル110円前後まで円安に振れています。為替レートが円安に触れる場合、外国通貨建ての資産をもっていると為替差益を得ることができます。

 また金利が上がると、安全な資産運用先である預金や債券にお金が集まり、リスクの高い投資先である株式からお金が逃げてくる場合もあります。そうなると株価が下落する可能性も高まります。

 金利の影響は比較的短期の値動きに繋がりやすいですが、iDeCoやNISAなどで長期運用を前提に考えるならば、長期の時間軸で成長しそうな市場を選択する必要もあります。その場合、日本株なのか米国株、欧州株、新興国株、全世界株なのかなど、自分なりの選定眼で市場を選ぶ必要があります。

 経済成長を人口の増減という視点だけで考えた場合、人口が減少中の日本よりも、人口が増えている米国や新興国、全世界などの方が人口増に伴う経済成長が見込めます。そのように考えるのであれば、外国株式に投資するような商品を選ぶのもいいでしょう。NISAを使って短期でお金を運用したいと考える人は、日本株式で短期の値動きに期待するという考えもあり得るでしょう。

 まずは、携帯電話の料金を見直して、手元のゆとり増やしてはいかがでしょうか。

高橋成壽(たかはし・なるひさ) ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
寿FPコンサルティング株式会社代表取締役
1978年生まれ。神奈川県出身。慶応義塾大学総合政策学部卒。金融業界での実務経験を経て2007年にFP会社「寿コンサルティング」を設立。顧客は上場企業の経営者からシングルマザーまで幅広い。専門家ネットワークを活用し、お金に困らない仕組みづくりと豊かな人生設計の提供に励む。著書に「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)。無料のFP相談を提供する「ライフプランの窓口」では事務局を務める。

【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。アーカイブはこちら