レクサス初のPHEV(プラグインハイブリッド)となる新型NXの全貌が、プロトタイプながら明らかになった。レクサスも世界の潮流であるカーボンニュートラル(脱炭素)に倣い、電動化ビジョンを発表。日本で唯一の高性能ハイパワーエンジンをリリースしつつ、一方で徹底したハイブリッド戦略を進めてきた。
先にはコンパクトSUV「UX」の電気自動車(EV)モデルを発売。レクサスブランドに限定すればモデルラインナップは限られているが、内燃機関からEVまで魅力的な品揃えに余念がない。今回発表された新型NXにPHEVが加わったことで、全方位的なパワーユニットをラインナップする思想を語る。
伝統と先進を美しく表現
NXはレクサスブランドの中核をなすSUVである。コンパクトSUVとしてUXがあり、上級モデルが「RX」、そしてさらに最上級に「LX」がある。サイズ的にも中庸で、日本の道にジャストな車格が与えられている。販売が安定して好調なのもうなづける。レクサスのヒット作の一つなのだ。
全長は4660ミリ、全幅は1865ミリ、全高は1640ミリ、ホイールベースは2690ミリ。先代モデルに比較して、わずかに拡大している。デザイン的にはキープコンセプトであり、NXの個性の源だったCピラーの造形、フロントのスピンドルグリルからテールエンドのコンビネーションランプにいたる“筆さばき”は先代を踏襲している。だが新鮮味が色濃く漂っており、伝統と先進を美しく表現している。
話題のPHEVは、直列4気筒2.5リッターハイブリッドをPHEV用に修正したものであろう。だが、総電力量18.1kWhのバッテリーを搭載するというのだから、電気モーターだけで約70キロほど走りきれるのだろうと想像する。
駆動方式はAWD(全輪駆動)。フロントとリアにそれぞれ電気モーターを搭載し、前後駆動配分が100:0~20:80の範囲で可変する。燃費と加速力だけでなく、踏破性や操縦性をも整えている。
爆発的な販売の予感
特徴的なのはドライビングモードだ。EV走行、ハイブリッド(HV)モード、セルフチャージモードなど、目的や状況に合わせて好みのモードを選択できるのはもちろん、「オートEV/HV」モードではカーナビに目的地を設定することで、駆動用電池の残量や経路、交通状況といったデータを取り込み、高速道路などでは自動的なHVモードに切り替えたりと、エネルギーを効率よく配分する。新世代のPHEVらしい機能である。
以上が新型NXのハイライトなのだが、実は内燃機関や駆動方式の充実も進んでいる。2.5リッターエンジンだけでなく、プラグインではないハイブリッドもラインナップしているし、駆動方式もAWDとFFが選択できる。電気モーターの力を借りない2.5リッターエンジンもカタログに加えている。そしてそれもAWDとFFを揃える。さらには2.4リッターターボエンジンも用意されている。パワーユニットの選択肢は豊富なのである。
レクサスが電動化ビジョンを発表してから時が経つ。UXにEVが加わったことを皮切りに、いよいよ本格始動の予感がする。そしてこのNX、爆発的な販売が期待できるような雰囲気が漂っている。
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