「アウディA3」が8年ぶりのフルモデルチェンジを遂げて日本に上陸。4代目となる新型は、実はすでに本国ドイツでは街中を走っていたのに、終息の気配を見せない災厄の影響をもろにかぶり、さらに世界的な半導体不足も重なり、日本市場への入荷が遅れたのである。
日本の街にちょうどよいコンパクトサイズ
アウディジャパンにとって入荷の遅れは不幸なことだった。コンパクトなハッチバックとセダンの2モデルがあるA3は、販売台数が見込める人気車種である。最低価格310万円からという低価格のプライスタグも販売上の武器になる。そんな魅力的なモデルの不在によって、アウディのジャパンマーケットでのシェアは低下した。だからこそ、カンフル剤であるA3の入荷は待ち遠しかったに違いない。
新型は待望のハイブリッドモデルとなった。世界的な潮流である脱炭素化が叫ばれているいま、電気がらみのモデルは不可欠である。EVでなくとも、ハイブリッドというキーワードは販売的な魔法の呪文として欠かせない。その“冠”を得て、A3は登場した。
ボディサイズは、やや大きくなった。5ドアハッチバックであるスポーツバックと、スタイリッシュなセダンがラインナップ。スポーツバックの全長は4325ミリ、全幅は1785ミリ、全高は1465ミリ。それに比較してセダンは全長がやや伸びやかだ。といっても、ライバルであるメルセデスベンツのAクラスやBMW1シリーズよりはコンパクト。日本の街にちょうどいい。
発進を力強くサポートする48Vオルタネーター
試乗車はA3のスポーツバック。直列3気筒1リッターを搭載する「30TFSI」。装備を充実させたアドバンスドグレードだ。
話題のパワーユニットは2種類。直列3気筒であり、1リッターまでダウンサイジングしたユニットにはターボチャージャーが組み合わされる。もう一基は直列4気筒であり、排気量は1.5リッター、同様にターボチャージャーが合体される。両エンジンに組み込まれるハイブリッドシステムは「マイルドハイブリッド」と呼ばれるタイプ。48Vのオルタネーター形式である。プリウスやフィットのように、電気モーターの力で積極的に加速するストロングハイブリッドタイプではない。運転席の底に小さなバッテリーを納め、オルタネーターで回生発電をしながら、発進の初期にささやかにモーターアシストする。
実際にドライブすると、赤信号からの発進など、アイドルストップからの最初の一歩が力強いのだ。48Vオルタネーターがエンジンを始動させるとともに、発進をアシストするからだ。
内燃機関は回転の上昇に比例してパワーが積み重なる傾向にある。逆にいえば、回転初期の低回転域ではトルクが細い。ターボチャージャーも排気圧を介してはパワーを高める機構ゆえ、同様に回転初期にはトルクが出ない。ましてや、トルクの細い1リッターにダウンサイジングされている。そんな低回転域の欠点に、回転初期から最大トルクを発生する48Vオルタネーターが良い仕事をするのである。想像以上に加速が力強いのはそれが理由なのだ。
走りも上質である。グレード構成からはともすれば廉価版のようにも思えるが、大衆車のそれではまったくない。試乗車は記念すべきファーストエディションであり、225/40R18インチのタイヤを履いていたこともあって、走りの軽快感は際立っていた。プレミアムモデルとしてはおそらく初となるマイルドハイブリッド搭載であり、しかも走りは軽快である。アウディ待望のA3は日本市場に受け入れられるに違いない。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。