道なき道を突き進む類稀なる悪路走破性。中東の砂漠やボルネオの密林など、およそ自動車が走れるとは思えぬ環境でも、ランドクルーザーは臆することなく踏破してしまう。生誕はいまからちょうど70年前の1951年。それ以来、オフロードキングの名を欲しいままにしてきた。そんな“悪路の鬼”が14年ぶりに全面刷新。新たな一歩を踏み出したのである。とはいうものの、キャラクターをいたずらに曲げるわけがなく、70年間紡いできたベクトルは直線的に未来へと向かう。現代的な技術が盛り込まれ、近代的に味付けされてはいるものの、正常進化である。
さらに磨かれた踏破性
プラットフォームは、伝統的なハシゴ型ラダー構造を踏襲している。太い角材が背後型に溶接されており、ボディシェルをハシゴの上にくくりつけたとイメージしていただければいい。基本骨格はトラックのそれと酷似しており、頑丈であり耐久性に優れているのだ。
驚くのは、先代と比較してボディディメンションが1ミリも変化していないことだ。もっと言えば、ホイールベースは1989年式の80系から変化していないのだ。モデルチェンジごとの肥大化が常識となっているにもかかわらず、ランドクルーザーは初志貫徹。これが理想のディメンションだと声高に主張するのである。
ちなみに、渡河性能(川を渡る能力)は水深700ミリだ。タイヤが隠れるような深い河でさえも保証されている。ちなみに、ライバルであるレンジローバーのディスカバリーの渡河性能は900ミリであり、その点で数字では劣るものの、踏破性能を否定するものではない。
それでいて、対地障害角(前後の障害物などを乗り越えられる角度)は、先代の200系を凌ぐ。より高いこぶや岩、より尖った丸太なども乗り越えやすくなった。まさに道なき道の踏破性能が磨かれているのだ。
運転しやすさと疲れにくさを追求
とはいえ、300系となる新型の開発コンセプトには、新しい文言が組み入れられている。いわく「世界中のどんな道でも運転しやすく、疲れにくい走り」である。悪路走破性には一点の妥協もない。乗り心地には不利なハシゴ型ラダーフレームを頑固に踏襲、リアのサスペンション形式も、乗り心地と操縦性を整えるには不利なトレーリングアーム式を採用している。それもこれも、オフロード性能を優先した結果なのだが、それでも運転しやすさと疲れにくさを求めているというのだ。
実際に乗りやすい。新型には二つのパワーユニットが準備されており、ガソリエンジンはV型6気筒3.5リッターツインターボ、ディーゼルエンジン仕様はV型6気筒3.3リッターツインターボである。その中のガソリン仕様はとくに穏やかな乗り味が印象的だった。
ハシゴ型ラダーフレームの弱点である操縦安定性も整っている。フラフラと落ち着きなく蛇行することも少なく、コーナリングの不安定さもない。新型は大幅に軽量化が進んでおり、先代に比較して約200キロのダイエットに成功。電子制御サスペンションを組み込むなどして、鈍重な走りからの脱却に成功したのだ。
ガソリンエンジンの最高出力は415ps、最大トルクは650N・mまで強化されている。先代はターボの助けを借りないV型8気筒4.4リッターであり、それよりもパワースペックは増強されている。組み合わされる10速ATの相性も優れており、市街地から高速道路まで乗りやすさが向上していた。
今回は悪路の踏破性を確認することはできなかったが、ともすれば都会的クロスカントリーモデルであるかのような優しい乗り味だった。ランドクルーザーはまた新たな一本を踏み出したのである。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。