試乗スケッチ

14年ぶりの全面刷新 新型「ランクル」 優しくなった“悪路の鬼”

木下隆之

 道なき道を突き進む類稀なる悪路走破性。中東の砂漠やボルネオの密林など、およそ自動車が走れるとは思えぬ環境でも、ランドクルーザーは臆することなく踏破してしまう。生誕はいまからちょうど70年前の1951年。それ以来、オフロードキングの名を欲しいままにしてきた。そんな“悪路の鬼”が14年ぶりに全面刷新。新たな一歩を踏み出したのである。とはいうものの、キャラクターをいたずらに曲げるわけがなく、70年間紡いできたベクトルは直線的に未来へと向かう。現代的な技術が盛り込まれ、近代的に味付けされてはいるものの、正常進化である。

14年ぶりに生まれ変わったランドクルーザー(トヨタ自動車提供)
ZX(ガソリン車)(トヨタ自動車提供)
ZX(ガソリン車)(トヨタ自動車提供)
GR SPORT(ガソリン車)(トヨタ自動車提供)
ZX(ガソリン車)の内装(トヨタ自動車提供)
対地障害角(登坂能力)(トヨタ自動車提供)

 さらに磨かれた踏破性

 プラットフォームは、伝統的なハシゴ型ラダー構造を踏襲している。太い角材が背後型に溶接されており、ボディシェルをハシゴの上にくくりつけたとイメージしていただければいい。基本骨格はトラックのそれと酷似しており、頑丈であり耐久性に優れているのだ。

 驚くのは、先代と比較してボディディメンションが1ミリも変化していないことだ。もっと言えば、ホイールベースは1989年式の80系から変化していないのだ。モデルチェンジごとの肥大化が常識となっているにもかかわらず、ランドクルーザーは初志貫徹。これが理想のディメンションだと声高に主張するのである。

 ちなみに、渡河性能(川を渡る能力)は水深700ミリだ。タイヤが隠れるような深い河でさえも保証されている。ちなみに、ライバルであるレンジローバーのディスカバリーの渡河性能は900ミリであり、その点で数字では劣るものの、踏破性能を否定するものではない。

 それでいて、対地障害角(前後の障害物などを乗り越えられる角度)は、先代の200系を凌ぐ。より高いこぶや岩、より尖った丸太なども乗り越えやすくなった。まさに道なき道の踏破性能が磨かれているのだ。

 運転しやすさと疲れにくさを追求

 とはいえ、300系となる新型の開発コンセプトには、新しい文言が組み入れられている。いわく「世界中のどんな道でも運転しやすく、疲れにくい走り」である。悪路走破性には一点の妥協もない。乗り心地には不利なハシゴ型ラダーフレームを頑固に踏襲、リアのサスペンション形式も、乗り心地と操縦性を整えるには不利なトレーリングアーム式を採用している。それもこれも、オフロード性能を優先した結果なのだが、それでも運転しやすさと疲れにくさを求めているというのだ。

 実際に乗りやすい。新型には二つのパワーユニットが準備されており、ガソリエンジンはV型6気筒3.5リッターツインターボ、ディーゼルエンジン仕様はV型6気筒3.3リッターツインターボである。その中のガソリン仕様はとくに穏やかな乗り味が印象的だった。

 ハシゴ型ラダーフレームの弱点である操縦安定性も整っている。フラフラと落ち着きなく蛇行することも少なく、コーナリングの不安定さもない。新型は大幅に軽量化が進んでおり、先代に比較して約200キロのダイエットに成功。電子制御サスペンションを組み込むなどして、鈍重な走りからの脱却に成功したのだ。

 ガソリンエンジンの最高出力は415ps、最大トルクは650N・mまで強化されている。先代はターボの助けを借りないV型8気筒4.4リッターであり、それよりもパワースペックは増強されている。組み合わされる10速ATの相性も優れており、市街地から高速道路まで乗りやすさが向上していた。

 今回は悪路の踏破性を確認することはできなかったが、ともすれば都会的クロスカントリーモデルであるかのような優しい乗り味だった。ランドクルーザーはまた新たな一本を踏み出したのである。

木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

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