試乗スケッチ

ロードカーの名を冠した「ノートオーラNISMO」 上質さの中にある攻撃的な走り

木下隆之

 経営的低迷期から脱するように、2期連続の赤字から脱却。コロナ禍からアメリカ市場が回復していることもあり、今年度1年間の最終損益が600億円の黒字となる見込み。日産復活の気配を感じる。

ノートオーラNISMO(日産自動車提供)
ノートオーラNISMO(日産自動車提供)
ノートオーラNISMO(日産自動車提供)
ノートオーラNISMO(日産自動車提供)
ノートオーラNISMO(日産自動車提供)
ノートオーラNISMO(日産自動車提供)
ノートオーラNISMO(日産自動車提供)

 コンパクト攻勢を強化

 復活と同調するように、日産のコンパクトカー攻勢が賑やかである。販売好調の「ノート」が新型になって登場したのも束の間、ノートの上級モデルである「ノートオーラ」が誕生したのが先月のこと。ノートが5ナンバーだったのに対してノートオーラは3ナンバー。車格感を増して、「プレミアムコンパクト」という新ジャンルを開拓しようとしている。

 ともに、パワーユニットは人気のe-POWER。同じ骨格とパワーユニットではすでにSUVの「キックス」がある。この先には真打「アリア」が控えている。日産が矢継ぎ早に新車を投入している。C・ゴーンの負の時代にはほとんど新車がリリースされず、販売は低迷。赤字の時期を続けていたのだが、それを跳ね返す勢いなのである。

 そんなコンパクト攻勢の最中、新たに「ノートオーラNISMO(ニスモ)」を追加したというのだから、鼻息は荒い。

 ベースがノートオーラであることはその名から想像する通りだが、e-POWERハイブリッドモデルをスポーティーに仕上げた点が特徴である。ニスモは日産のモータースポーツ部隊であり、その名をもっともスポーティーなグレードに据えたグレード構成は定着しつつある。モータースポーツでの活躍に同調するように知名度を上げつつあり、その勢いを後押しする。

 ノートオーラの別の顔

 外観から想像するように、走りは研ぎ澄まされている。搭載するエンジンは直列3気筒1.2リッターだが、e-POWERの特徴はエンジンが直接駆動輪に直結せず、あくまで発電機としてのみ機能する。それが蓄えたバッテリーパワーで電気モーターを駆動。そのスタイルには違いはなく、ノートに比較してパワーアップはない。だが、制御が攻撃的に細工されており、アクセルの踏み加減以上に加速が鋭くセッティングされているのだ。だから、走り始めた瞬間から強烈な加速度が襲ってくるのである。

 サスペンション系の味付けも攻撃的で、スプリングは25%~36%も強化されているから、コーナーを攻め込んでもロールがほとんどしない。ステアリングの切れ味は鋭く、ワインディングを攻め込みたくなるフットワークなのである。

 ノートオーラはノートをベースに上質感ある走りが信条であり、「新たなプレミアムコンパクトを創造する」と宣言するように、大人の雰囲気が備わっている。そんなノートオーラを攻撃的に仕立てたことで、また新たなノートオーラの別の顔を見たような気がした。

 ちなみに、オーラは2WDと4WDが選択できるものの、ノートオーラニスモは2WDのみに限定している。その理由は車重にある。ノートオーラの4WDは2WDに対して約130キロ重い。これは軽快な走りを完成させるためには致命的な数字だ。それを嫌って2WDとしたのである。

 ここに興味深いデータがある。実は先代のノートにもニスモ仕様は設定されていた。2014年9月デビューであり、ノート内のグレード別構成比率はノートニスモが約8%という幸先の良いスタート。だがそれだけにとどまらず、ノートニスモにe-POWERが加わった途端に数字が跳ね上がる。ピーク時には約14%に達したほどの成功モデルなのだ。

 スポーツカーならまだしも、経済性を売りにするコンパクトハイブリッドモデルの約14%は異例だと言わざるを得ない。つまり、経済性が武器のe-POWERと攻撃的ブランドのニスモは意外に親和性がある。

木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

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