混雑した車内に乗り込むと、モダンなスカーフをまとった、ふたり連れのマレー女性と目が合った。にっこりと、うっとりするようなやさしい微笑みを浮かべるから、思わずこちらも笑顔になる。
クアラルンプール郊外に住み、週末を利用して繁華街ブキッ・ビンタンにショッピングにやってきた女子大生。きれいな英語と少し日本語も話し、国際的な仕事に就きたいと、日本へも興味津々だ。
「今日はわたしの誕生日です。そんな記憶に残る日に、日本のひととお話できてハッピー」。うれしくなるようなことを言ってくれ、日本の若い女性と同じように、ラインストーンできらきらにデコったスマホで記念撮影。こちらもカメラを向けさせてもらう。にこやかに見守る周囲の目も温かい。
ブキッ・ビンタン駅をすぎると車内がすき、ベンチシートに腰をおろす。前に立ったのは、サッカーのユニフォームを着た男性3人組。「日本人なら、W杯出場を決めたジョホールバルを知っているでしょう。ジョホールはサッカーの街。ぼくらはそこから来たんです」
マレーシアの国内リーグ「マレーシア・スーパーリーグ」の試合を観戦するために、週末は各地に出向いているとか。マレーシアやシンガポールでは、日本のサッカーはとても人気があるそうだ。
乗車時間わずか20分弱。マレーシアをぐっと親しく感じられる、濃密な時間を過ごした。
取材協力/マレーシア政府観光局
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。