【江藤詩文の世界鉄道旅】ドイツ鉄道(4)気がつけば国境越え…旅情をそぐ“シェンゲン協定”にがっかり

2013.11.23 18:00

スイス国鉄の客車を牽引してきたドイツ鉄道の機関車。5両編成で2階建て車両は連結されておらず、食堂車もなかった

スイス国鉄の客車を牽引してきたドイツ鉄道の機関車。5両編成で2階建て車両は連結されておらず、食堂車もなかった【拡大】

  • シャフハウゼン駅で、スイス国鉄のマークが入った機関車が接続
  • 仕事を終えて去って行くドイツ鉄道の機関車
  • 乗車した一等車両。ボックスシートにはテーブルがあり、食事をとっている人も。背もたれが向かい合ったすき間に小型スーツケースの収納場所があるなど、旅行者も利用しやすい

 ヨーロッパを鉄道で旅するなら、ぜひともやってみたいことがあった。それは国境越え。ようやく訪れた機会に、ドイツからスイスへの移動手段として、迷うことなく鉄道を選んだ。

 両国はシェンゲン協定に加盟しているから、車内での出入国検査がないことはわかっていた。けれども期待していたのだ。だって国を越えるのだ。何かしら、それらしいことはあるだろうと。

 スイスはEUに加盟していないので、税関検査があるかもしれないとの事前情報もあった。しかし検札に回って来た車掌に問うと、そんなものはないという。 

 まもなく国境の町シャフハウゼンに到着するというころ、車掌が急ぎ足で近づいて来た。「国境を越えることがわかるものがありましたよ。ドイツ鉄道の機関車が切り離されて、スイス国鉄のそれに接続します」

 危ない。見逃すところだった。カメラを抱えてあたふたとホームを急ぐ。作業はわずか1分。客車はそのままだから、ほかの乗客はだれひとり降りてこない。というかドイツ国内を走行中から、すでにスイス国鉄所有の客車に乗車していたのだ。

 自席に戻ると、のんびりくつろいでいたドイツ人男性が「何かあったのか」と、声をかけてきた。国境を越える。そう言うと、あきれた顔で「ドイツとスイスは、仕事で毎日行き来する人もたくさんいるんだ。シェンゲン協定のおかげで出入国審査がなくなり、旅行者にとっても便利でしょうに」と苦笑する。

 金髪の巻き毛をひっつめにして、細い銀縁めがねをかけた女性が、後を引き取ってこう言った。

「わたしはスイス人よ。ようこそ、スイスへ。いまあなたは国境を越えたわ」

取材協力/ドイツ観光局

 ■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。