ミシュラン三つ星の日本料理店「銀座小十(こじゅう)」(東京都中央区)の店主、奥田透さん(44)は「これで日本料理のすばらしさに日本人自身が気づくことができれば、本当にうれしい」と満面の笑みを浮かべた。
奥田さんは今年9月、仏パリに日本料理店「OKUDA」を開店させた。本物の日本料理を欧州の人々に知ってもらうためだ。開店によって「改めて日本の食材、文化の豊かさに気づいた」と奥田さん。パリ店を開いたのは「10年後に日本料理を学ぶ人がいなくなるのではないか、とさえ思う」危機感からだった。
調理師養成学校ではフランス料理などの希望者は多いが、日本料理は少数派。食べる人も作る人も減る中で、日本料理を継承していけるのか。自問自答する中でパリでの挑戦を思いついた。
「日本にはフランス人以上に上手なフランス料理を作る料理人がいるが、日本料理を日本人以上に作る外国人はいない。日本料理を守り、日本料理の可能性を示すのが私の役割です」
政府は提案書で、和食の特徴として「正月や田植えなどとの密接な関係」もアピール。しかし、正月の伝統食のお節を既製品で済ませるなど伝統食の作り方を親が子に教える機会が少なくなった。
その代役を果たすのが料理教室。家庭料理の伝承を目的に料理教室を開催するベターホーム協会では12月、お節料理の作り方を教えるが、初めて手作りするという受講生もいる。東京・銀座で24人の受講生に筑前煮など3品の作り方を教えていた講師、今井由美子さん(61)は「お節にはいわれがありますが、知っていると心が豊かになる。料理を通じて日本の文化を伝えたいので(今回の登録は)とても励みになる」と話していた。