■「負けるものか」が日本再生の鍵
バブル崩壊後、「失われた20年」と言われるような長い景気停滞が続いています。かつて世界を席巻していたはずの企業や産業が、一転苦境に陥っているような例が散見されます。「なぜ」と、首をかしげているのは、私だけではないと思います。
思い返せば、かつて日本は、第二次世界大戦の敗戦により、国土は焦土と化し、産業基盤や社会基盤のほとんどが灰燼(かいじん)に帰しました。そのような悲惨な状況のなかにあっても、国民は希望を失いませんでした。焼け野原に毅然と立ち、不屈不撓(ふとう)の一心を募らせました。
そうして国民一人一人が、「なにくそ」と歯を食いしばり、努力と創意工夫を連綿と続けることで、日本は苦難を乗り越えたばかりか、高度成長を果たし、「奇跡」と称される経済復興を成し遂げました。
戦後の焼け野原から再興したことを考えれば、いまの日本には、十分な資金も、優れた技術も、真摯(しんし)な人材もあります。足りないのは戦後の国民が持っていたような「燃える闘魂」、すなわち「なにくそ、負けるものか」という強い「思い」だけです。この思いこそが日本再生の鍵ではないかと考えます。
日本航空の再建が良い例かもしれません。私は、経営再建を何としても実現しようと不屈不撓の一心で経営にあたりました。「どんな苦労があろうとも、どんな困難に直面しようとも、全員の力でこれを乗り越え、必ずや日本航空を再建しよう」と社員に訴え続けました。そのような純粋で強い思いが社員にも通じ、その心が変わったからこそ、奇跡と称される再建がなったものと考えます。
2013年3月に日本航空の取締役を辞しました。少しは静かに考える時間が持てるようになりました。そのゆったりとした時間の流れのなかで、この国の来し方、行く末に思いをはせて書いたのが本書です。あくまでも一経営者の持論でしかありませんが、日本再生への一助ともなればと考えています。(毎日新聞社 1575円)