TMIと福島の事故状況の相違は、化学反応に必要な冷却水量の差にあります。TMIでは、高温の炉心に大量の水が瞬時に入ったのに対し、福島では消防ポンプによる少量の注水が長時間続きました。この差が福島事故を複雑にし、また炉心ごとに溶融経緯を変化させました。
水とジルコニウムが反応すれば水素が残ります。この水素が原子炉建屋に出て、空気と混じり爆発を起こしたのです。反応は大変激しく、水素の発生も急激です。爆発時刻は炉心溶融の時刻とほぼ一致しています。
このように事故経緯を解読している過程で、これまで語られていない新たな事実がいくつか導き出されました。
中でも重要な事実は、故吉田昌郎所長が最後の手段として賭した原子炉の減圧・注水において、注水に時間の遅れがなかったならば、2、3号機は溶融爆発に至らなかったであろうということ、また格納容器の水を潜るベントは除染効果が大きいため、事故直後にベントを開いていれば、近隣住民の避難は必要なかったことです。これらの事実を、今後、原子力の安全向上に生かしてほしいと思います。(3240円 日本電気協会新聞部)
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【プロフィル】石川迪夫
いしかわ・みちお 1934年生まれ。東京大学工学部卒業後、日本原子力研究所で動力試験炉「JPDR」の建設、運転、廃炉を手がけ、その間安全性研究に従事。北海道大学教授を経て、2005年日本原子力技術協会理事長に就任。東日本大震災当時は最高顧問を務めており、福島事故について自ら海外に出向き情報を伝えた。政府や国際機関など、原子炉の安全についての多数の委員を歴任してきた。