タイの鉄道が好きだ。思い返せば、はじめて外国を鉄道で旅したのがタイだった。ボストンバッグひとつを提げ、バンコクからチェンマイまで北本線の各駅停車を乗り継ぐ、地をはうような旅だった。この旅がなかったら、いまの仕事に就いていなかったかもしれない。感傷的な気分で、夜明け前のフアランポーン駅に立った。
煌々と明かりが灯った窓口で、乗車券を購入する。乗車するのは、東北地方のウボンラーチャターニーまで行く東北線南線の快速列車135号。目的地は、ゾウ祭りで知られるスリン駅だ。時刻表によると、6時40分にフアランポーン駅を出発し、午後3時07分にスリン駅に到着する。およそ8時間半の長旅だ。座席は3等と2等があり、リクライニングシートのある2等車を選んだ。運賃は279バーツ(乗車時のレートで約920円)。
窓口の彼女はテキパキと笑顔で応対するし、電光掲示板はリアルタイムで情報が更新される。これは期待できそうだ。何って定時運行を。午前6時38分。列車が定刻の2分前に動き始めたとき、予感は確信に変わった。