ベトナムで豪華絢爛な墓といえば、フエにある世界遺産のカイディン帝廟だろう。カイディン(1885~1925)について、「自分のことしか考えない、遊びばかりの駄目な王様でした」と案内役のハイさん。政治は宗主国のフランスに任せきりで、11年かけてバロック調のお墓作りに執心したという。
妻を500人持ち子供を167人も産ませた皇帝がいる一方で、カイディンの妻は1人だけ。愛妻家というわけではなく「自分が大好きで女性に興味なかったのかも」。フランスに亡命した最後の皇帝との血縁を信じるベトナム人はいないとか。玉座の金箔を施されたカイディン像や展示された写真を見ると、確かに中性的な顔立ちをしている。
これだけの嫌われ者だが、1945年のベトナム8月革命でグエン朝が滅亡しても、 カイディン帝廟は破壊されることはなかった。カイディンが受けた“最後の審判”の結果は定かではないが、遺骨は今も玉座の下に納まっているそうだ。
“フランスかぶれ”と揶揄する人は多いが、日本のビール瓶の破片も装飾に取り入れた世界に類のない貴重な文化遺産だ。当時の姿のまま後世に伝えることができたベトナム人の冷静さに感謝せねば。(産経デジタル 長浜明宏)
取材協力:ベトナム航空