デフレ脱却によって株価が上がると見込まれるから株式を買うのではなく、株価を押し上げるために国民の貴重な財産を賭けるとしたら本末転倒である。そうした政治家や官僚による「恣意(しい)性」を排除するためにも、GPIFの運用方針がきちんと専門家によって決められる体制が不可欠なのだ。
透明性と公正性を担保するためには、誰か一人の独断で決めるのではなく、合議によって決める体制が不可欠だ。現在の独法では理事長が全権を握り、理事長の任命権を持つ政府の意向が色濃く反映されかねない。作業部会では合議制を実現するために独立行政法人から外すことが合意されている。
もっともガバナンスの見直しが始まる前に、GPIFの株式シフトはどんどん進んでいる。今月5日には最高投資責任者(CIO)が任命され、大きな権限を持ちつつあるという。だが、その人選プロセスは全く不透明だった。特定の政治家の強い推薦で就任したという噂もある。GPIFでガバナンスの失敗が起きないうちに、ガバナンス改革を早急に行うべきだろう。ガバナンスの失敗が起きて損害を被るのは年金資産をGPIFに委ねている国民自身である。
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【プロフィル】磯山友幸
いそやま・ともゆき 早大政経卒。日本経済新聞社で24年間記者を務めて、2011年に独立。52歳。