法学から政策を論じる際、出発点は憲法である。憲法25条は、全国民に、人たるに値する生活を営む権利としての生存権を保障する。しかし、実際には全国民が生存権を保障されるべき主体であるにもかかわらず、その実現手段が一様ではない。財政の論理に偏した政策を進めるあまり、結果的に児童・障害者・高齢者という国民の属性の差によって、生存権保障の具体的実現のありように開きが生じている現実がある。このような意味で国民間に生じた不平等や格差を是正することもまた、政策の役割である。
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【プロフィル】豊島明子
とよしま・あきこ 専門分野は行政法学。主要な研究テーマは「社会保障における国家・行政の役割とその実現手法に関する研究」。著書に「自治体行政システムの転換と法」(共著、日本評論社)、「地方自治のしくみと法」(共著、自治体研究社)など。