実はこの新聞広告、キャッチコピーの下のほうに、小さく「『会社』説明会ではない、『仕事』説明会を行います」という見出しがあり、職種別の説明会日程が掲載されています。この広告で西武セゾングループが挑戦した最大のポイントは、この職種別採用という概念の導入にありました。日本企業の多くが、総合職という名目で“同じ釜の飯を食うゼネラリスト”というカンパニー型雇用を進めてきた中で、“特定領域のスペシャリスト”を募るジョブ型雇用に挑んだのです。
しかし、その後の経緯はご存じの通り。30年近く経過しても、日本独特のゼネラリスト型雇用は、まだまだ大勢を占めています。その結果として、転職活動で「自分の中のスペシャリティー」が説明しづらく、仕事を勝ち取る難しさに直面するミドル世代の方もたくさんおられる状況です。
このときの西武セゾングループのチャレンジが、もっと一般化していたらどうなっていたか。あくまで仮定の話にすぎませんが、日本の労働市場は、もっと健全な流動化ができていたかもしれない、と考えています。
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【プロフィル】黒田真行
くろだ・まさゆき 1989年リクルート入社。約30年にわたり転職・中途採用サービスの企画に関わる。2006年から8年間「リクナビNEXT」編集長。14年にルーセントドアーズを設立し、日本初のミドル向け転職サービス「Career Release40」(http://lucentdoors.co.jp/cr40/index.html)を提供している。