安いだけじゃない、正確で清潔、乗り心地良好
それにしてもびっくりしたのは、運賃の安さだ。体感として、北京は東京より物価が3割ほど安いように感じたが、それにしても1時間半ほど乗って一等車で17元、二等車なら6元(約111円)というのは驚くべき値段ではないだろうか。東南アジアなどの経済的に貧しい国では、安い移動費に出合うこともあるが、その場合はボロボロの列車やまったくアテにできない運行状況もセットになってくる。
ところが、北京の場合はまったく不便さを感じない大都会で、列車はほぼ正確に運行し、混雑してはいるものの、列車自体は清潔で乗り心地も悪くない。国内旅行がこれだけ活性化しているのも、この運賃が一端を担っているのではないか。だってこの値段なら、休みの日に用がなくてもどこかへ行きたくなるのだから。
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら