これまで金科玉条とされてきた「三者合意」は、国際労働機関(ILO)が出した「フィラデルフィア宣言」というものが「根拠」になってきた。終戦前の1944年に出された宣言である。しかし、宣言文を読んでも明確に三者で法律を決めよと書いてあるわけではない。
決して、労働政策を政府主導で決めることを否定しているわけではないのだ。要は戦後の労働運動の中で、労使合意のうえで政策決定するというプロセスが「慣行」として出来上がってきたとみていい。
三者合意を前提とする限り、制度の大改革は不可能に近い。これまで獲得してきた既得権の上に、接ぎ木するのが精いっぱいで、制度の微修正が関の山なのだ。安倍内閣は発足以来、「雇用」を岩盤規制の一つとして改革を掲げているが、遅々として進まないのはこのためだ。
資本家と労働者の対立を前提にしていた終戦直後と、現在の会社と働く人の関係は大きく変わった。正社員として一つの会社で定年まで働き続けるというスタイルは当たり前ではなくなり、より多様な働き方を求める時代に変わった。そうした中で、労働政策の考え方や労働法制が時代遅れになっているのは明らかだ。
果たして労政審にどこまでメスを入れられるのか。有識者会議の議論に注目したい。
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【プロフィル】磯山友幸
いそやま・ともゆき 早大政経卒。日本経済新聞社で24年間記者を務め2011年に独立。54歳。