
培養されたピロリ菌(浅香正博北海道医療大学長提供)【拡大】
◆「ならない」は誤解
世界保健機関(WHO)の専門組織、国際がん研究機関(IARC)は14年、「胃がんの8割はピロリ菌感染が原因。除菌で発症は3~4割減る」との報告書を発表した。
IARC作業部会のメンバーだった浅香正博北海道医療大学長は、自覚症状がなくても機会をみてピロリ菌感染の有無を検査するよう勧める。両親、祖父母が感染していたり潰瘍や胃がんになっていたりすると、感染の可能性は高い。新薬が登場して、除菌の成功率は極めて高くなっている。
浅香学長は「ピロリ菌が関与している病気のほとんどで除菌が保険適用になった。ピロリ感染による胃炎と診断するのに内視鏡検査が必須であることや、今年から胃がん検診でエックス線検査のほかに内視鏡検査を選択できるようになったことで、胃がんの早期発見も増えていくはずだ」と期待する。
一方で浅香学長は「ピロリを除菌すればもう胃がんにはならない」との誤解が、患者だけでなく医療関係者の中にもあることを心配している。「除菌で発がんリスクが下がることは確かだ。ただ、胃炎が進むほど、また年齢が高いほど除菌後もリスクは残る」という。
浅香学長によると、ピロリ菌がいなくなったその時点で、既に潜在的ながんができてしまっているケースや、ごく初期の小さながんが見逃されてしまうケースなどが考えられる。除菌に成功した後に胃がんが見つかった症例は、学会でも再々報告されているという。
浅香学長は「除菌が成功しても少なくとも1~2年に1回程度、特に萎縮性胃炎がある場合はそれがきれいに治るまでできれば毎年、内視鏡による胃がんの検診を受けるべきだ」と強調。「日本の内視鏡検査の診断技術は高い。早期に見つかれば、胃がんで死亡する危険性は極めて低くなっています」と話している。