【IT風土記】大分発 営農の見える化を実現、農業再生の道開く原価管理 (1/3ページ)

くしふるの大地の重政農場。三角屋根がシンボルの旧農業高校校舎の面影を残している
くしふるの大地の重政農場。三角屋根がシンボルの旧農業高校校舎の面影を残している【拡大】

  • くしふるの大地のスタッフがITを駆使し生産管理や品質管理を行っている
  • 収穫された野菜を手にした、くしふるの大地・加島社長(左)と玉田県議
  • 農場で取れた新鮮野菜を食事として提供する「子ども食堂」のイラスト(写真は加工)
  • 玉田輝義大分県議会議員
  • 力の源カンパニーの清宮俊之社長

 農地法の改正に伴い、農業に参入する企業が増え、日本の農業再興へ向けた動きが始動している。ラーメン店「博多一風堂」を展開する株式会社力の源カンパニー(福岡市)が設立した農業生産法人「株式会社くしふるの大地」が大分県で取り組んでいる営農改革もそのひとつだ。高齢化や新規就業者の不足により、担い手の減少が深刻な問題となる中、若者たちが夢を託せる職業に農業を進化させることが大切だ。大分県で始まった営農改革は、カンと経験に頼ってきた農業に、生産性の向上やカイゼンなどの経営感覚を取り入れることを目指し、着実に成果を実らせ始めている。

 地域との交流の場としても活用される農場

 大分県豊後大野市の旧三重農業高校跡地も活用し、2015年に整備された重政農場に足を運ぶと、青々としたキャベツ畑が目に飛び込んでくる。くしふるの大地が、2009年に開拓した大分県竹田市の久住農場のノウハウを導入し、キャベツのほか、ハクサイやニンジンなどさまざまな野菜を栽培している。

 三角屋根がシンボルの旧校舎の面影を残した事務所棟では、「子ども食堂」が月2回開かれる。家庭の事情で十分な食事を取ることが難しい子どもたちを招待し、農場でとれたての新鮮野菜を中心に調理した食事が提供されている。また、農業経営者らが経営課題を持ち寄って勉強会を開き、生きた情報を交換するなど、「食」をテーマとした地域の交流の場としても活用されている。

 「企業の農業参入は全国で増えているが、地元との交流を積極的に行い、地域に溶け込んでいる企業は少ない」。地元選出の大分県議会議員、玉田輝義氏はこう話す。1月下旬に広瀬勝貞大分県知事が視察に訪れた際も、地域住民と農業生産法人の交流が、農業を核とした活性化につながることに期待を寄せていたという。

「PDCA」のステップを繰り返す