■教育する人がいない
本来は、こういう人たちを教育し、管理する人が必要だ。そうでないと、20代前半の社員が、いじめやパワハラの被害を受ける可能性がある。そこから、精神疾患やうつ病になることもありうる。ところが、30代の社員が少ない中小企業やベンチャー企業などでは、勘違いをした20代後半の社員たちを抑えつける人がいない。結果として、20代後半の社員が20代前半の人の「大先輩」になってしまう。数年の経験を積んだだけなのだが、大きな勘違いをしまうのだ。
■競争がない
数年の経験をして、20代後半になると、自分には相当な力がついたと思い込むのは、社員間の競争が浸透していないからだ。多少の競争があったとしても、激しいものではない。競争がないと、自分の力は正確にはわからない。「勝つ、負ける」ことを経験しないままに数年が経ってしまう。自分を「そこそこにデキル人」と受けとめてしまうのも無理はない。大企業や外資系企業では、20代の間でも激しい競争がある場合があるが、こういう職場では20代後半の社員は謙虚な人が多い。20代前半の社員の前で威張ることは少ない。
20代後半は、キャリアをつくるうえで1つの曲がり角にある。後輩を抑えつけたい、威張りたいという人と、仕事をがむしゃらに、謙虚に覚えようとする人にわかれていく。いつの時代も、前者のほうが多いように感じる。
本来は、後者のほうが多くならないと、その人は成長しない。20代前半の社員も浮かばれないだろう。明るい未来がない20代後半よりも、前途が輝かしい20代前半の社員を大切にする仕組みを会社はつくるべきではないだろうか。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)。
■連載/あるあるビジネス処方箋